【宮城県仙台市】難読地名「将監」の由来・語源をたどる旅in将監沼・将監風致公園
地名は、土地の記憶を編み込んだ器である。私は地域文化を記録する仕事をしている。各地の地名の由来や伝承、神社の祭神、産業の背景を掘り下げ、現地の空気を感じながら文章にする──それが私の旅のかたちだ。
今回訪れたのは、仙台市泉区にある「将監(しょうげん)」という地名。泉中央駅からほど近く、昭和期に造成された大規模団地「将監団地」を中心に広がる住宅地である。地名の読みは「しょうげん」。一見して難読でありながら、どこか武家風の響きを持つこの名に、私は強く惹かれた。
私は将監風致公園を訪れ、将監沼のほとりに立った。水面は静かに光を反射し、周囲には遊歩道と緑が広がっていた。沼の周囲にはかつての堰の名残があり、地名が水とともに育ってきたことを実感した。
将監の読み方
将監は「しょうげん」と読みます。
将監の語源由来
「将監(しょうげん)」とは、古代律令制における武官職名であり、兵部省や衛府に属する中級官吏を指す。仙台市泉区の「将監」という地名は、この官職名に由来するとされるが、直接的な命名根拠は不明である。
地元の伝承によれば、江戸期にこの地に築かれた「将監堰(しょうげんぜき)」が地名の由来とされることが多い。将監堰は、元禄年間に築かれた大規模な灌漑施設であり、七北田川流域の水田を潤すための重要な「新堰」であった。
堰の築造に関わった人物として「横沢将監吉久」という名が伝えられており、彼が伊達藩の重臣であったことから、堰の名が地名化したとする説がある。ただし、将監という名が個人名か官職名かは定かではなく、地名の由来は官職・人物・堰の三重の記憶が重なっている。
参考
仙台銀行「将監支店|営業店レター」
仙台市「泉なつかし写真館―第9回 泉の団地」
将監沼・将監風致公園と地名の再生
将監沼は、かつての将監堰の水源地にあたり、昭和40年代の団地造成に伴って整備された。周囲は将監風致公園として整備され、地域住民の憩いの場となっている。私は沼のほとりを歩きながら、地名が水とともに再生されたことを実感した。
現在では「将監中央」「将監殿」「将監二丁目」など、町名としても細分化され、地名は団地とともに育ってきた。地名は、風景と暮らし、そして水と記憶を編み込んだ器──「将監」という名は、昭和の都市化とともに再び息を吹き返した言葉だった。
所在地:〒981-3132 宮城県仙台市泉区将監8丁目
まとめ
将監という地名は、古代律令制の武官職「将監(しょうげん)」に由来するとされるが、仙台市泉区においては、江戸期に築かれた「将監堰」とその築造に関わった人物「横沢将監吉久」の名に由来するという地元伝承が残る。私は将監風致公園を訪れ、将監沼のほとりに立ちながら、その名に込められた意味を探った。水面の静けさ、堰の記憶、そして都市の風景──それらは、地名が語る風景だった。
将監堰は、七北田川流域最大級の灌漑施設であり、元禄年間に築かれた「新堰」として地域の水田を潤した。その堰の名が地名化し、昭和期の団地造成時に「将監」の名が正式に採用されたことで、地名は都市とともに再生された。
「将監」という難読地名は、武官の名を冠した稀有な地名であり、水利と都市、そして地域の記憶が重なった言葉である。私はその名が語る物語を、静かに辿った。将監沼の水面に映る空は、今もなお、地名の記憶を静かに湛えていた。