【宮城県仙台市】難読地名「支倉町」の読み方や語源・由来をたずねるin青葉区・ジョジョの奇妙な冒険・ふじや千舟 本店「支倉焼」

仙台市青葉区にある「支倉町(はせくらまち)」は、初見では読みづらい難読地名のひとつだ。だがその響きには、ただの地名以上の深い歴史と文化が宿っている。支倉常長——慶長遣欧使節としてローマに渡った伊達政宗の家臣。その名を冠したこの町には、仙台の国際性と武家文化の記憶が静かに息づいている。

私は地域文化ライターとして、地名に込められた由来や人々の記憶を辿ることをライフワークとしている。今回の探訪は、「支倉町」の読み方と語源、そしてその背景にある支倉常長と義父・支倉紀伊時正の足跡を追う旅だった。さらに、地元銘菓「支倉焼」を味わいながら、広瀬川の風に吹かれて町の空気を感じることで、地名が語る物語を五感で体験した。

近年では、人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』のキャラクター「支倉未起隆」の名前の由来としても注目され、支倉町は歴史とポップカルチャーが交差する聖地として再評価されている。地名は、都市の記憶をつなぐ言葉であり、文化の層を重ねる媒体でもある。

この記事では、「支倉町の読み方と語源」「支倉常長と支倉紀伊時正」「ジョジョとの関係」「実際に訪れて感じたこと」を軸に、仙台の地名に宿る記憶と文化の魅力を紐解いていく。

所在地:〒980-0824 宮城県仙台市青葉区

支倉町の読み方と由来・語源

「支倉町」と書いて「はせくらまち」と読む。仙台市青葉区に位置するこの町名は、1970年(昭和45年)の住居表示制度の改定により正式に制定された比較的新しい町名である。しかし、その由来は江戸時代初期にまで遡る。

この地は、かつて「支倉通」「支倉丁」と呼ばれていた地域で、仙台城下の西端に位置していた。町名の「支倉」は、伊達政宗の家臣であり、慶長遣欧使節団の正使として知られる支倉常長(はせくら つねなが)の養父支倉紀伊の屋敷があったこと由来するという。支倉家は、伊達家の重臣・留守氏の一族であり、仙台藩の中でも特に重要な家柄だった。

地名としての「支倉」は、もともと宮城県加美郡加美町(旧・小野田町)にある地名で、支倉氏の本拠地とされる。支倉常長の祖先はこの地を本貫とし、そこから「支倉」の姓を名乗ったとされる。つまり、仙台市の「支倉町」は、支倉氏の名を冠した町であり、彼らの居館や屋敷があったことを示している。

また、支倉町の周辺には「支倉通」「支倉橋」「元支倉丁」など、支倉の名を冠した地名が点在しており、かつての城下町の構造を今に伝えている。これらの地名は、仙台市が進める「歴史的町名活用道路」の一環としても保存・活用されており、地名を通じて地域の歴史を学ぶ手がかりとなっている。

「支倉町」という地名は、単なる住所表記ではない。それは、支倉常長という人物の記憶を今に伝える文化的な遺産であり、仙台の国際性と歴史の重層性を象徴する存在でもある。難読であるがゆえに、逆に人々の関心を引き、地名の由来を知るきっかけとなる。地名に込められた意味を知ることで、私たちは都市の記憶とより深くつながることができるのだ。

参考

仙台市「道路の通称として活用する歴史的町名の由来(《支倉通》)」「主な収蔵品 12 支倉常長に関する資料(6)

川崎町「マンガふるさとの偉人「支倉常長」 [PDFファイル

仙台市図書館「「郷土ゆかりの人物(支倉常長)」について調べる

支倉町とジョジョの奇妙な冒険

仙台の地名「支倉町」は、近年『ジョジョの奇妙な冒険』ファンの間でも注目を集めている。第4部『ダイヤモンドは砕けない』に登場するキャラクター「支倉未起隆(はせくら みきたか)」は、仙台出身の原作者・荒木飛呂彦氏が地元の地名をもとに名付けたとされる。

支倉未起隆は、宇宙人を自称する謎の人物で、スタンド能力を持たないながらも物語に深く関わる存在。彼の名前に使われた「支倉」は、仙台市青葉区の支倉町に由来するとされ、地名がキャラクター名として全国に知られるようになった稀有な例である。

荒木氏は仙台市立上杉山中学校、仙台第二高等学校を卒業した生粋の仙台人。作品には「広瀬川」「花京院」「支倉」「杜王町(杜の都仙台)」など、仙台の地名が随所に登場する。支倉町もその一つであり、ファンの間では聖地巡礼の対象となっている。

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実際に支倉町を歩いてみると、町名表示板や交差点の標識に「支倉」の文字が刻まれており、ジョジョファンにとっては特別な意味を持つ場所となっている。地名がポップカルチャーと結びつくことで、地域の文化資源として再評価される動きも見られる。

仙台市は「歴史的町名活用道路」として支倉通を認定しており、地名の保存と活用に力を入れている。ジョジョという作品を通じて、支倉町は歴史と現代文化が交差する象徴的な場所となった。

支倉常長と支倉紀伊時正

支倉町の名の由来となった人物は、慶長遣欧使節の正使として知られる支倉常長(はせくら つねなが)だが、その背景にはもう一人の重要人物がいる。支倉紀伊時正(はせくら きい ときまさ)——常長の義父であり、仙台藩主・伊達政宗に仕えた家臣である。

時正は、陸奥国柴田郡支倉村(現・宮城県川崎町支倉地区)に居館を構え、支倉家の祖として知られる。常長は山口常成の子として生まれたが、幼少期に時正の養子となり、支倉姓を継いだ。つまり、支倉常長という名は、義父・時正から受け継がれたものであり、地名「支倉町」もその家系に由来する。

支倉町は、仙台城下の西端に位置し、かつて支倉家の屋敷があったとされる。町名として正式に制定されたのは1970年の住居表示改定時だが、江戸時代から「支倉通」「支倉丁」として親しまれてきた。地名に刻まれた「支倉」は、常長だけでなく、時正を含む一族の記憶を今に伝えている。

常長は1613年、伊達政宗の命を受けてサン・ファン・バウティスタ号でローマへ渡り、教皇パウルス5世に謁見した。帰国後はキリスト教禁制の時代に翻弄され、不遇のうちに没したが、その偉業は仙台市博物館やサン・ファン館などで今も語り継がれている。

支倉町という地名は、義父・時正の名を継いだ常長の記憶とともに、仙台の国際性と歴史の深層を象徴する場所なのだ。

支倉焼と支倉町

支倉町を訪れる前、私は仙台駅から徒歩数分の「ふじや千舟 本店」に立ち寄った。ここで販売されている銘菓「支倉焼」は、白餡と胡桃を包んだ焼き菓子で、支倉常長の偉業にちなんで名付けられたという。包装には洋風の意匠が施されており、常長がローマへ渡った歴史を感じさせる。

店員さんに尋ねると、「支倉焼は、仙台の誇りである支倉常長に敬意を込めて作られたお菓子なんです」と教えてくれた。私は一つ購入し、支倉町へ向かった。

支倉町は、高層マンションと静かな住宅街が混在する落ち着いた町並みだった。通りには「支倉通」の表示があり、町名の由来を記した案内板も設置されていた。私はその前で立ち止まり、支倉常長と支倉紀伊時正の記憶に思いを馳せた。

その後、広瀬川沿いへと足を延ばした。川のせせらぎと秋の風が心地よく、私はベンチに腰掛けて支倉焼を口にした。白餡の優しい甘さと胡桃の香ばしさが広がり、仙台の歴史と文化が味覚を通じて身体に染み込んでいくようだった。

支倉町を歩き、支倉焼を味わい、広瀬川の風に吹かれる——それは、地名に宿る記憶と文化を五感で感じる旅だった。

ふじや千舟 本店

所在地:〒980-0021 宮城県仙台市青葉区中央4丁目7−18

電話番号:0222225305

参考:支倉焼

まとめ

仙台市青葉区の「支倉町(はせくらまち)」は、地名としての美しさと歴史的深みを併せ持つ場所だ。その由来は、慶長遣欧使節としてローマに渡った支倉常長にあり、さらにその義父・支倉紀伊時正の名を継いだことに起源を持つ。支倉町は、仙台城下の西端に位置し、かつて支倉家の屋敷があったとされる。町名として正式に制定されたのは1970年だが、江戸時代から「支倉通」「支倉丁」として親しまれてきた。

地名に込められた「支倉」は、常長の偉業だけでなく、支倉一族の記憶を今に伝える文化的な遺産である。常長は伊達政宗の命を受けてサン・ファン・バウティスタ号でローマへ渡り、外交官としての役割を果たした。帰国後はキリスト教禁制の時代に翻弄され、不遇のうちに没したが、その足跡は仙台の文化資源として今も語り継がれている。

また、支倉町は近年、漫画『ジョジョの奇妙な冒険』のキャラクター「支倉未起隆」の名前の由来としても注目され、聖地巡礼の対象となっている。地名がポップカルチャーと結びつくことで、地域の魅力が新たな形で発信されているのだ。

私は支倉町を歩く前に「ふじや千舟 本店」で支倉焼を購入し、広瀬川沿いで味わった。白餡と胡桃の優しい甘さが、支倉常長の旅路と仙台の風土を思わせる味わいだった。地名に宿る祈りと記憶を、五感で感じる旅——それが支倉町を歩くということなのだ。

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