【宮城県大崎市】名産品「岩出山かりんとう」をたずねる|一斗缶の値段や販売店など
「かりんとうを買いに岩出山へ行く」と言うと、少し不思議がられる。仙台駅や市内のスーパーでも手に入るのに、なぜわざわざ?と。けれど私にとって、かりんとうはただの甘味ではない。土地の空気を吸い、地元の人の手で作られたものを、現地で買って食べる──それが旅の醍醐味だと思っている。
宮城県大崎市岩出山。伊達政宗が仙台に移る前に居城を構えていた町であり、今もその面影を残す静かな城下町だ。そんな岩出山に、地元で長年愛されてきた「かりんとう」があると知ったのは、仙台駅の土産コーナーで一斗缶サイズのかりんとうを見かけたときだった。ずっしりとした缶の重みと、素朴な包装に惹かれ、調べてみると岩出山には三軒の製造元があるという。
私はその三軒すべてを訪ねてみることにした。旅の目的は観光でもグルメでもない。宮城の風土と人の手が生んだ味を、じっくりと噛みしめることだった。かりんとうは、甘さの中に土地の記憶が宿る食べ物だ。それを現地で買い、家で食べる──その一連の流れが、私にとっての「味わう」という行為なのだ。
参考
大崎市「かりんとう」
食品等流通合理化機構「坪田菓子店」
「岩出山かりんとう」とは
岩出山は、伊達政宗が仙台に移る前に居城を構えていた城下町だ。城跡は公園として整備され、春には桜、秋には紅葉が彩る。町並みには瓦屋根の家屋が多く、京都のような風情が漂うことから「小京都」とも呼ばれている。
そんな岩出山で根付いているのが、地元産米粉を使ったかりんとうだ。一般的な小麦粉製とは異なり、米粉ならではのやさしい甘みと香ばしさが特徴。生地は薄く平らに伸ばされ、四角形に成形されてから油で揚げられるため、火の通りが均一で、味もムラなく仕上がる。
この形状は、町の瓦屋根を模したとも言われており、見た目にも岩出山らしさが感じられる。パリッとした食感と、どこか懐かしい味わい──それは、城下町の静かな時間と重なるような、優しい甘みだ。
地元では冠婚葬祭の引き出物や、日常のお茶請けとして親しまれてきた。町の人々にとって、かりんとうは単なる菓子ではなく、暮らしの一部であり、記憶の味でもある。
かりんとう
かりんとうは、小麦粉をベースに砂糖、水、塩、重曹などを練り込み、棒状や板状に成形した生地を油で揚げ、黒糖や白糖の蜜を絡めて乾燥させた和菓子の一種。庶民の駄菓子として親しまれてきた一方で、老舗和菓子店でも扱われる奥深い存在だ。
起源には諸説あり、奈良時代に唐から伝わった「唐菓子」や、江戸時代の「花りんとう」などが挙げられる。地域によって形状や味付けが異なり、関東では柔らかめ、関西では硬め、東北では煎餅に似た円盤型や短冊型など多様なスタイルが見られる。
現代では、胡麻、くるみ、抹茶、野菜粉末などを練り込んだバリエーションも豊富。焼きかりんとうや芋ケンピ風のものも登場し、世代を超えて愛される菓子となっている。
岩出山のかりんとうは、こうした全国的なかりんとう文化の中でも独自の進化を遂げた存在だ
一斗缶かりんとうの値段や魅力
岩出山のかりんとうを語るうえで、欠かせない存在がある。それが「一斗缶かりんとう」だ。仙台駅の土産コーナーや道の駅で見かけたとき、その大きさと存在感に思わず足を止めた。銀色の缶に貼られた素朴なラベル、ぎっしりと詰まったかりんとう──それは、ただのお菓子ではなく、土地の記憶を詰め込んだ宝箱のようだった。
一斗缶とは、容量で言えば約18リットル。中身のかりんとうはおよそ2kg以上になる。かつては法事や祭りの引き出物として町内で配られる定番だったという。今ではその姿を見る機会も減ったが、岩出山では今もなお現役だ。坪田菓子店では、予約すれば一斗缶入りを用意してくれる。贈答用としても人気があり、遠方からの注文も多いという。
値段は量によって異なるが、オンラインショップを見ると、大久保製菓のかりんとう(ゴマ)内容量2100g で¥2980 税込と記載されていた。近年は原材料高騰のあおりをうけている店が多く、最新の価格は各自ネットや現地で確認したほうが良いだろう。
実際に手に取ってみると、ずしりとした重みがある。缶を開けると、ふわりと立ちのぼる香ばしい香り──黒糖、胡麻、自然薯など、種類豊富なかりんとうがぎっしりと詰まっている。米粉を使った岩出山のかりんとうは、軽やかな食感とやさしい甘みが特徴で、どれを食べても均一な味わいが広がる。これは、生地を薄く平らに伸ばして四角形に成形し、火の通りを均一にしているからこそ生まれる味の安定感だ。
この四角い形状は、岩出山の町並みに多く見られる瓦屋根を模したとも言われている。小京都と呼ばれる町の風景を映したようなかりんとう──見て楽しく、食べて懐かしい。そんな魅力が一斗缶には詰まっている。
岩出山かりんとう販売店三軒巡り
岩出山のかりんとうを求めて、私は三軒の店を巡った。どの店も町の人々に長年親しまれてきた老舗であり、それぞれに個性とこだわりがある。
坪田菓子店
まず訪れたのは、岩出山通丁にある坪田菓子店。TV番組でもたびたび紹介されている人気店で、店頭には「伊達な詰合せ」や「政宗公セット」など、ユニークなネーミングのギフトが並ぶ。一斗缶入りのかりんとうは贈答用としても評判で、遠方からの注文も多いという。
坪田菓子店のかりんとうは、地元産の米粉を使っているのが特徴だ。一般的な小麦粉製とは異なり、米粉ならではのやさしい甘みと香ばしさがあり、食感も軽やか。生地は薄く平らに伸ばされ、四角形に成形されてから油で揚げられるため、火の通りが均一で味もムラがない。この形状は、岩出山の町並みに多く見られる瓦屋根を模したとも言われており、見た目にも“伊達な町”らしい風情が感じられる。
所在地:〒989-6441 宮城県大崎市岩出山通丁168−12
電話番号:0229720243
ひさご菓子店
次に向かったのは、同じ通丁にあるひさご菓子店。かりんとう以外にも水まんじゅうや餡餅も販売していたが、地元では「岩出山のかりんとうはひさごに限る」と言われるほどの定番店だ。ごまとくるみ入りのかりんとうは、瓦のように薄くて軽やか。パリパリとした食感と香ばしさがクセになる。店主は「昔ながらの製法を守っているんです」と語り、袋の中には胡麻と胡桃の二種類が詰められていて、味の変化も楽しめる。道の駅「あ・ら・伊達な道の駅」でも取り扱われており、観光客にも人気が高い。
所在地:〒989-6441 宮城県大崎市岩出山通丁137−6
電話番号:0120720529
大久保製菓
最後に訪れたのは、下野目の住宅地にある大久保製菓。看板も控えめで、まるで知る人ぞ知る工房のような佇まい。黒糖かりんとうは、見た目こそ素朴だが、噛むほどに味が深まる。坪田菓子店の詰め合わせにも大久保製菓のかりんとうが含まれており、岩出山の味の柱のひとつとして確かな存在感を放っている。
所在地: 〒989-6412 宮城県大崎市岩出山下野目南原109
電話番号: 0229-72-3079
三軒を巡って感じたのは、どの店も「かりんとうを作る」というより、「かりんとうを守っている」という姿勢だった。味の違いはあれど、共通しているのは、岩出山の空気をまとった甘みだった。米粉のやさしさ、瓦型の美しさ、そして地元の人々の誇り──それらが一袋の中にぎゅっと詰まっていた。
仙台駅やスーパーでも買える?
岩出山のかりんとうは、現地で買うのが一番──そう思って旅に出たが、実は仙台市内でも手に入れることができる。仙台駅の土産物売り場や、地元密着型のスーパー、さらには「みやぎ・みちのく カイタク市場」などの地場産品店でも取り扱いがあるようだ。特に坪田菓子店のかりんとうは、パッケージに「伊達な町岩出山」の文字が入っており、ひと目でそれとわかる。
ただし、すべての種類が揃っているわけではない。詰め合わせや定番の黒糖・胡麻味は比較的見かけるが、自然薯入りや季節限定の味、ギフト仕様の化粧箱入りなどは、やはり現地でないと手に入りにくい。特に一斗缶サイズは、流通の都合上、仙台市内ではほとんど見かけない。やはり、あのずっしりとした缶を抱えて帰るのは、現地での特権なのだろう。
また、道の駅「あ・ら・伊達な道の駅」では、ひさご菓子店や坪田菓子店のかりんとうが常時販売されており、観光客にも人気が高い。高速道路の長者原サービスエリアでも取り扱いがあるが、人気商品のため売り切れていることも多い。実際、私が訪れたときも在庫がなく、「これはもう本店に行くしかない」と決意したのだった。
仙台市内での購入は便利だが、やはり現地で買うと味の印象が違う。包装の温もり、店主との会話、町の空気──それらが一緒になって、かりんとうの味をより深く記憶に刻んでくれる。とはいえ、日常の中でふと食べたくなったとき、仙台駅やスーパーで手に入るのはありがたい。岩出山の味が、日常にそっと寄り添ってくれる。
岩出山かりんとうオンラインショップでの購入
旅を終えて自宅に戻ったあと、私はふと、もう一度あのかりんとうを食べたくなった。幸いなことに、岩出山のかりんとうはオンラインでも購入できる。特に坪田菓子店は自社のオンラインショップを運営しており、Amazon Payやクレジットカード、代金引換など多様な決済方法に対応している。送料も商品と住所を入力すれば自動計算され、注文のハードルは低い。
オンラインショップでは、人気の「伊達な詰合せ10種かりんとう」や「政宗公セット」「愛姫セット」など、ギフト向けの商品が充実している。熨斗掛けや紙袋付きの化粧箱も用意されており、贈答品としても喜ばれる。実際、レビューには「お歳暮に贈ったらとても喜ばれた」「東京の親戚に送ったら懐かしい味だと感動された」といった声が並ぶ。
一斗缶入りのかりんとうも、オンラインで注文可能だ。法事やイベント用にまとめ買いする人も多く、缶を開けたときの香ばしい香りと、ぎっしり詰まったかりんとうの迫力は、画面越しでも伝わってくる。缶の中には黒糖、胡麻、自然薯などのバリエーションが詰め合わされており、家族や職場で分け合うのにもぴったりだ。
また、道の駅「あ・ら・伊達な道の駅」のオンラインストアでも、ひさご菓子店のかりんとうを取り扱っている。こちらは在庫が変動するため、気になる商品があれば早めの注文がおすすめだ。
オンラインでの購入は、現地の空気こそ感じられないものの、味そのものは変わらない。むしろ、旅の記憶を呼び起こすスイッチとして、家にいながらにして岩出山の風景がよみがえる。遠く離れていても、あの甘みが届く──それは、かりんとうが持つもうひとつの魅力かもしれない。
まとめ
岩出山のかりんとうを巡る旅は、単なる甘味探しではなかった。そこには、土地の風土と人のまなざしが宿っていた。米粉を使ったやさしい甘み、瓦屋根を模した四角い形、パリッとした食感──それらはすべて、岩出山という町の空気を映し出していた。
三軒の店を巡り、それぞれの味を確かめるたびに、私は「かりんとうとは何か」を考えさせられた。単なるお菓子ではない。それは、町の人々が守り続けてきた文化であり、記憶であり、誇りだ。店主たちの言葉の端々からは、「変えないこと」への強い意志が感じられた。時代が変わっても、味を変えない。形を変えない。そこに、岩出山のかりんとうの価値がある。
一斗缶という昔ながらの容器に詰められたかりんとうは、まるでタイムカプセルのようだった。缶を開けると、香ばしい香りとともに、町の風景や人々の笑顔がよみがえる。贈り物としても、自分へのご褒美としても、その存在感は圧倒的だ。
仙台駅やスーパー、オンラインショップでも手に入るようになった今、岩出山のかりんとうは、より多くの人の手に届くようになった。けれど、やはり現地で買うという体験には、特別な意味がある。町を歩き、店を訪ね、手に取って、味わう──その一連の流れが、かりんとうという菓子に命を吹き込むのだ。
私は京都に住んでいる。男山の石清水八幡宮のふもとに暮らし、日々その空気を吸っている。そんな私が、岩出山の八幡信仰や町の風景に親しみを覚えるのは、偶然ではないのかもしれない。かりんとうを通して、土地と土地がつながり、記憶と記憶が重なる──そんな旅だった。
甘みの奥に、町の記憶がある。岩出山のかりんとうは、それを静かに教えてくれる。
