宮城発祥の「生どら焼き」探訪|元祖カトーマロニエから榮太楼・仙台駅での購入・実食まで

「生どら焼きって、宮城が発祥なんですよ」──そんな一言を聞いたのは、仙台駅のおみやげ処でふと立ち寄ったときだった。冷蔵ケースの中に並ぶ、ふわふわの皮に生クリームがたっぷり挟まれたどら焼き。見た目はどら焼きなのに、どこか洋菓子のような佇まい。気になって調べてみると、1985年に利府町の「カトーマロニエ」が初めて「生どら」と名付けて販売したのが始まりだという。

その後、塩竈市の「榮太楼」が多彩なフレーバー展開で人気を集め、仙台銘菓としての地位を確立した。今では「こだま」などの和菓子店も参入し、仙台駅や県内のスーパー、サービスエリアでも手軽に買えるようになっている。冷蔵・冷凍で流通する生どら焼きは、賞味期限や保存方法にも工夫があり、贈答品としても人気が高い。

私は今回、宮城の魅力を伝える旅の一環として、この「生どら焼き」を実際に購入し、家で味わってみることにした。どら焼きという伝統菓子が、どうして“生”になったのか。その背景には、土地の気候や食文化、そして職人たちの挑戦があるはずだ。冷たい甘みの奥に、宮城の風土が感じられるかもしれない──そんな期待を胸に、私は生どら焼きの探訪を始めた。

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生どら焼きとは?

どら焼きと聞けば、ふんわりした皮に粒あんを挟んだ、昔ながらの和菓子を思い浮かべる人が多いだろう。だが、宮城県にはそのどら焼きを大胆に進化させた「生どら焼き」という名物がある。見た目はどら焼き、けれど口に運べば、まるで洋菓子のようなとろける甘みが広がる。冷蔵ケースに並ぶその姿は、和菓子の枠を超えた存在感を放っている。

生どら焼きとは、どら焼きの皮で生クリームと餡を挟んだ冷蔵・冷凍スイーツ。従来のどら焼きが常温保存可能な焼き菓子だったのに対し、生どらは生クリームの鮮度を保つため冷蔵流通が基本。最近ではカスタード、チョコ、フルーツ入りなどバリエーションも豊富で、和洋折衷の魅力が詰まっている。

その魅力は、食感と香りのバランスにある。皮には蜂蜜や酒が練り込まれ、しっとりとした口当たり。中のクリームは、北海道産の生乳を使ったものや、自家製餡と合わせたものなど、店ごとに工夫が凝らされている。冷たいままでも、少し常温に戻しても美味しく、季節を問わず楽しめるのも特徴だ。

生どら焼きは、冷蔵・冷凍で販売されるため、保存方法にも注意が必要だ。冷蔵なら数日、冷凍なら数週間の賞味期限があるが、解凍後は早めに食べるのが鉄則。再冷凍は風味を損なうため避けたい。こうした繊細な扱いが必要な点も、どこか“生菓子”らしい。

今では全国各地で見かけるようになった生どら焼きだが、その発祥は宮城県だということで意外性がある。

生どら焼きの発祥地は宮城県|利府町カトーマロニエが元祖

生どら焼きが誕生したのは、1985年(昭和60年)のこと。場所は宮城県宮城郡利府町。Wikipediaによると、利府町の菓子店「カトーマロニエ」が、生クリームと小豆餡をホイップしてどら焼きの皮で挟み、「生どら」と名付けて販売したのが始まりだったという。和菓子と洋菓子の融合という発想は当時としては斬新で、冷蔵で販売するというスタイルも画期的だった。

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カトーマロニエの生どらは、ふわふわの皮にたっぷりのホイップ餡を挟んだ、見た目にも華やかな一品だった。冷たくて軽やかな口当たりは、従来のどら焼きとはまったく異なる印象を与え、若者や女性を中心に人気を集めた。地元では「新しい仙台みやげ」として話題になり、口コミでその存在が広がっていった。

この生どら焼きの誕生は、宮城の菓子文化に新たな風を吹き込んだ。従来の和菓子は、保存性や格式を重んじるものが多かったが、生どらは“今食べる”ことに価値を置いた菓子だった。冷蔵流通を前提とした商品設計は、製造から販売までの工程に変化をもたらし、地元の菓子店にも新たな挑戦を促した。

カトーマロニエの生どらは、今も利府町で販売されているが、カトーマロニエの店舗はなく、「イオン新利府店銘店コーナー」と「あじわいの朝利府店」にて販売されている。現在ではその名を知る人は少なくなってきている。元祖としての誇りはあるものの、広く知られるようになったのは、次に紹介する「榮太楼」の存在が大きいようだ。生どら焼きが仙台銘菓として定着するまでには、もうひとつの物語がある。

参考

多賀城市観光協会「利府

宮城県 復興・危機管理部 復興支援・伝承課「第6回宮城県ご当地グルメ 利府町・カトーマロニエの「梨んぼう」をお取り寄せ!

イオンモール新利府 南館

所在地:〒981-0114 宮城県宮城郡利府町新中道3丁目1−1

仙台銘菓としての広がり

生どら焼きが仙台銘菓として定着するきっかけを作ったのが、塩竈市に本店を構える「榮太楼」だった。カトーマロニエが生どらを発売した数年後、榮太楼はそのスタイルを受け継ぎながら、独自の改良を加えて販売を開始。定番の小豆クリームに加え、抹茶、ずんだ、いちご、チョコ、さらには季節限定のモンブランやティラミスなど、多彩なフレーバー展開で一気に注目を集めた。

榮太楼の生どらは、皮にアカシア蜂蜜と酒を練り込み、しっとりとした食感に仕上げている。中のクリームは、北海道産の生乳を使った生クリームと自家製餡を合わせたもの。冷蔵で5日間、冷凍で約30日間保存可能という扱いやすさもあり、贈答品としても人気が高い。オンラインショップでは、5個入りの簡易箱から、焼印入りのギフトセットまで幅広く展開されている。

仙台駅構内では、S-PAL仙台やおみやげ処せんだい、NEWDAYSなど複数の店舗で取り扱いがあり、観光客にも手に取りやすい。また、道の駅や高速道路のサービスエリア、県内のスーパーでも販売されており、地元民にとっても身近な存在となっている。

榮太楼は、ただ商品を売るだけでなく、生どら焼きという文化を育ててきた。季節ごとの限定商品や、イベントに合わせたパッケージ展開など、常に新しい提案を続けている。その姿勢は、宮城の菓子文化を牽引する存在として、多くの人に支持されている理由でもある。

生どら焼きは、もはや一過性の流行ではない。宮城県が生んだ甘味の革新として、今も進化を続けている。次のセクションでは、仙台駅での購入体験と、実際に家で味わった感想を綴っていこう。

参考

なまどら焼|菓匠 榮太楼

菓匠 榮太楼本舗 本店

所在地:〒985-0052 宮城県塩竈市本町4−5

電話番号:0223620235

仙台駅で買える?

生どら焼きが宮城発祥と知ったとき、私はすぐに「仙台駅で買えるのか?」という疑問を抱いた。旅の途中で手に入れられるなら、帰りの新幹線で味わうのもいい。調べてみると、仙台駅構内には複数の販売スポットがあることがわかった。

まず目に留まったのは、駅構内の「おみやげ処せんだい」。4号店・6号店・9号店のいずれも、生どら焼きを冷蔵ケースで取り扱っている。榮太楼の定番「なまどら焼 小豆」や、こだまの「ずんだクリーム」「抹茶」「大納言」など、種類も豊富。冷蔵品なので、保冷バッグを持参するか、購入時に保冷剤を付けてもらうと安心だ。

さらに、S-PAL仙台の地下1階「HANAGATAYA」や、東館2階の「東北めぐり いろといろ」でも販売されている。ここでは季節限定のフレーバーや、焼印入りのギフトセットも見かけた。特にこだまの「ティラミス生どら」はエスパル限定で、ビターな味わいが大人に人気だという。

NEWDAYS仙台駅各店でも取り扱いがあり、通勤客や観光客が気軽に手に取れるようになっている。NEWDAYSミニ10号店やNEWDAYSエスパル店では、冷蔵棚に並ぶ生どらが目を引く。価格は1個280円前後で、手土産にも自分用にも買いやすい。

仙台駅での購入は、まさに“旅の途中で出会える甘み”だ。冷蔵品という性質上、持ち歩きには少し気を使うが、それもまた生どら焼きの特別感を高めてくれる。駅で買ってすぐ食べるもよし、家に持ち帰ってゆっくり味わうもよし──宮城の甘みは、駅の中にも静かに息づいている。

参考

店舗案内 | 【仙台名物】こだまの餅入りどら焼き」「【仙台名物】こだまの餅入りどら焼き・生どら焼き

菓匠 榮太楼「店舗情報

賞味期限と保存方法|榮太楼の生どら焼きは冷蔵5日・冷凍30日

生どら焼きは“生”と名がつくだけあって、保存方法には少し気を使う。榮太楼の「なまどら焼 小豆」を購入した際、店員さんから丁寧に説明を受けた。「冷蔵で5日間、冷凍なら約30日間保存できます。解凍後は再冷凍せず、なるべく早くお召し上がりください」と。

まず冷蔵保存の場合、到着日を含めて5日間が消費期限。これは発送方法が冷蔵便でも冷凍便でも同じで、商品に記載されている日付は“冷蔵状態での期限”となる。つまり、冷凍便で届いた場合でも、解凍した時点からカウントが始まるということだ。

冷凍保存の場合は、約30日間の保存が可能。ただし、食べる際には冷蔵庫に移して自然解凍する必要がある。電子レンジでの解凍は推奨されておらず、風味が損なわれる可能性がある。解凍後は冷蔵保存に切り替え、なるべく早く食べるのがベスト。再冷凍は避けるべきで、一度解凍した生どらはそのまま食べ切るのが理想的だ。

また、榮太楼の生どら焼きにはアカシア蜂蜜が使われているため、1歳未満の乳児には与えないよう注意書きがある。これは蜂蜜に含まれるボツリヌス菌のリスクを避けるためで、家庭での取り扱いにも配慮が必要だ。

保存性と風味のバランスを考えると、冷凍便でまとめて購入し、食べる分だけ自然解凍するのが賢い選択かもしれない。ギフト用としても、冷凍状態での発送は安心感がある。生どら焼きは、ただのスイーツではない。その扱い方ひとつにも、職人のこだわりと、食べる人への配慮が込められている。

参考

なまどら焼小豆5個入(簡易箱入)

宮城県物産振興協会オンラインショップ「なまどら焼 15個入(化粧箱)【菓匠 榮太楼】

実食レポート

旅の終わりに、私は榮太楼の「なまどら焼 小豆5個入(簡易箱)」を持ち帰った。冷蔵便で届いた箱を開けると、個包装されたどら焼きが整然と並んでいる。見た目はシンプルだが、皮の焼き色と厚み、そして中身のふくらみが、丁寧な仕事ぶりを物語っていた。

冷蔵庫で冷やしたまま、まずはひとつ。皮はしっとりとしていて、指で押すとふわりと戻る弾力がある。口に運ぶと、蜂蜜の香りがふわっと広がり、すぐに生クリームと餡の甘みが追いかけてくる。北海道産の小豆を使った餡は粒感がほどよく残り、クリームとのバランスが絶妙だ。甘すぎず、重すぎず、まさに“とろける和菓子”という印象。

冷たいままでも美味しいが、少し常温に戻すと、皮の香ばしさが際立ち、クリームがよりなめらかになる。家族にも食べてもらったが、「これ、和菓子なの?洋菓子なの?」と不思議そうに笑っていた。確かに、どら焼きの形をしていながら、口当たりはまるでケーキのよう。けれど、後味にはしっかりと小豆の余韻が残る。

5個入りの箱は、あっという間に空になった。冷蔵保存で5日間という期限は短いようでいて、むしろ“今食べる”ことの贅沢さを教えてくれる。冷凍で届いた場合は、自然解凍してから食べるのが推奨されているが、今回は冷蔵品だったため、すぐにそのまま味わえたのも嬉しい。

生どら焼きは、ただの甘味ではない。それは、土地の空気を閉じ込めたような、静かな贈り物だった。宮城の風土と職人の手仕事が、ひと口ごとに感じられる──そんな時間を、私は家でゆっくりと味わった。

まとめ

生どら焼きという菓子は、宮城県が生んだ甘味の革新だった。1985年、利府町のカトーマロニエが初めて「生どら」と名付けて販売したその瞬間から、どら焼きは“生”という新しい表情を得た。塩竈市の榮太楼がその文化を広げ、仙台銘菓としての地位を築いたことで、今では全国で見かけるようになった。

けれど、宮城の生どら焼きには、他にはない“土地の味”がある。蜂蜜を練り込んだ皮、生乳から作られたクリーム、粒感を残した餡──それらがひとつになって、どこか懐かしく、どこか新しい味わいを生み出している。冷蔵で数日、冷凍で数週間という短い命の中に、職人の手仕事と素材への敬意が詰まっている。

仙台駅での購入体験も印象的だった。おみやげ処やS-PAL、NEWDAYSの冷蔵棚に並ぶ生どら焼きは、旅人の目を引き、手を伸ばさせる。その場で食べるもよし、家に持ち帰って味わうもよし。私は後者を選び、家族とともにその甘みを分かち合った。冷たい皮に包まれたクリームと餡が、口の中でゆっくりと溶けていく時間は、旅の余韻そのものだった。

生どら焼きは、ただのスイーツではない。それは、宮城の風土と文化が形になったものだ。保存方法に気を配りながら、ひと口ずつ丁寧に味わう──その行為自体が、土地への敬意を表しているように思える。冷蔵庫から取り出す瞬間、包装を開ける瞬間、そして口に運ぶ瞬間。すべてが、宮城という場所とつながっている。

京都に住む私にとって、宮城は遠いようで近い。生どら焼きという甘味を通して、土地と土地がつながり、記憶と記憶が重なる──そんな旅だった。

甘みの奥に、町の記憶がある。生どら焼きは、それを静かに教えてくれる。宮城の誇りは、冷たい皮の中に、やさしく息づいていた。

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