京都・清水寺近くの茶室ギャラリー玄庵にて「京都文化と煎茶」を愉しむ茶会サロンを開催

秋、京都・清水寺のほど近くにある茶室ギャラリー「玄庵」にて、地域文化ラボ主催の茶会サロン「お茶っこ」が開催された。今回のテーマは「京都文化と煎茶」。伏見人形の布袋さんを床の間に据え、萬福寺発祥とも言われる煎茶文化を軸に、参加者とともに京都の伝統に触れるひとときとなった。
布袋さんと煎茶文化が交差する茶席
茶室の床の間には、伏見人形の布袋尊が静かに鎮座していた。布袋さんは、福徳円満を象徴する七福神の一柱であり、京都・伏見の郷土玩具として親しまれてきた存在。その柔和な笑みは、茶席に穏やかな空気をもたらし、参加者の心をほぐしていた。
煎茶は、萬福寺の隠元禅師が中国から伝えたとされる文化であり、京都に根付いた「文人趣味」と深く関わっている。今回の茶会では、宇治の玉露を用い、萬福寺の卍崩しをイメージした行燈を設えに取り入れることで、煎茶文化の精神性と美意識を空間に表現した。
京都の伝統が宿る設えと味覚
茶器には京焼を使用。繊細な色合いと手触りが、玉露のまろやかな旨味を引き立てる。京焼は、京都で400年以上の歴史を持つ伝統工芸であり、茶道・煎茶道との深い関わりを持つ器として知られている。
供された和菓子は、京都発祥の老舗「虎屋」の羊羹。濃厚でありながら上品な甘みが、玉露の旨味と絶妙に調和し、茶席に季節の彩りを添えていた。参加者は、器の重みや菓子の口当たりを確かめながら、五感を通じて京都文化の奥行きを味わっていた。
多様な参加者が語り合う京都文化
この茶会には、社会人、日本留学中の海外の方、学生など、毎週異なる属性の参加者が集った。茶を囲みながら、京都の文化や歴史、煎茶の背景にある思想について語り合う時間は、世代や国籍を越えた交流の場となった。
参加者からは、「布袋さんの笑顔に癒された」「煎茶ってこんなに奥深いとは思わなかった」「京焼の器が美しかった」「また参加したい」といった声が寄せられ、京都文化への関心と共感が広がっていた。
おわりに
「京都文化と煎茶」をテーマにした茶会サロンお茶っこは、単なる茶の時間ではなく、京都が守り続けてきた文化の層に触れる静かな旅のようなひとときであった。布袋さんの微笑み、玉露の香り、京焼の器の手触り、そして参加者同士の語らい──それらが重なり合い、空間に豊かな余韻を残した。
地域文化ラボでは、今後も日本茶を通じて、土地の記憶や人の感性に触れる場を丁寧にひらいていく予定である。日々の暮らしの中に、ほんの少しの静けさと豊かさを。そんな願いを込めて、次の一服を準備している。
投稿者プロ フィール

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地域伝統文化ディレクター
宮城県出身。京都にて老舗和菓子屋に勤める傍ら、茶道・華道の家元や伝統工芸の職人に師事。
地域観光や伝統文化のPR業務に従事。
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