【宮城県】日本有数ハゼを使った「仙台雑煮」の特徴や由来・歴史とは?レシピや作り方・味付け、ひき菜など具材、食べれるお店を紹介!

正月の食卓を彩る雑煮は、日本各地で独自の進化を遂げてきた郷土料理だ。その中でも宮城県仙台市を中心に伝わる「仙台雑煮」は、椀からはみ出すほどの大きな焼きハゼを豪快に盛り付けることで知られている。松島湾で豊漁だったハゼを焼いて干し、出汁に使うという独特の調理法は、江戸時代末期から続く伝統。さらに阿武隈川を遡上するサケからとれるハラコ(イクラ)、宮城特産の仙台せり、そして凍らせて旨味を凝縮させた「ひき菜」が加わり、華やかで滋味深い一椀となる。

仙台雑煮は単なる正月料理ではなく、地域の風土や歴史を映す文化遺産でもある。伊達政宗公が食した雑煮は干しアワビやナマコを用いた別のスタイルだったが、庶民の間で広まったのがこの焼きハゼ雑煮だ。年末に「ひき菜」を仕込み、大晦日に焼きハゼを水に浸して出汁をとる家庭の風景は、宮城の冬の風物詩。近年はハゼやサケの不漁で高級料理となりつつあるが、伝統を守る保存会やイベントも盛んで、仙台雑煮は今も正月三が日の食卓に欠かせない存在だ。

参考

全国学校栄養士協議会「仙台雑煮

農林水産省「仙台雑煮 宮城県 | うちの郷土料理

東北大学「今年の正月の贅沢は、ハゼ出汁の雑煮 - 東北大学加齢医学研究所

仙台雑煮とは?特徴と魅力

仙台雑煮(せんだいぞうに)は、宮城県仙台市を中心に伝わる郷土料理で、正月三が日の食卓を彩る特別な一椀である。最大の特徴は、椀からはみ出すほど大きな焼きハゼを豪快に盛り付ける点だ。松島湾で豊漁だったハゼを炭火で焼き、天日で干した「焼きハゼ」は、藁で連にして売られていた。これを水に浸して煮出すことで、香ばしく深みのある出汁が取れる。現在は石巻市でも焼ハゼが作られている。焼きハゼの旨味が染み込んだすまし仕立ての汁は、仙台雑煮ならではの味わいを生み出す。

具材も豪華で、阿武隈川を遡上するサケからとれるハラコ(イクラ)、宮城特産の仙台せり大崎市岩出山の「凍り豆腐」、ずいき(里芋の茎)、紅白かまぼこなどが彩りを添える。さらに「ひき菜」と呼ばれる大根・人参・ごぼうの細切りを湯通しして凍らせた食材が加わる。凍らせることで繊維が壊れ、味が染みやすくなるため、雑煮全体に深い旨味が広がる。餅は焼いて加え、具材で覆い隠すように盛り付けるのが仙台流

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仙台雑煮は、海の幸と山の幸をふんだんに使った豪華さが魅力であり、正月の「ハレの日」を象徴する料理だ。焼きハゼの香ばしさ、ハラコの華やかさ、せりの爽やかな香り、ひき菜の食感が一体となり、滋味深い味わいを生み出す。近年はハゼやサケの不漁で高級料理となりつつあるが、保存会やイベントで伝統が守られ、仙台雑煮は今も宮城の冬を代表する食文化として息づいている。

参考

KHB東日本放送「正月の仙台雑煮に欠かせない焼きハゼ作り 宮城・石巻市

仙台雑煮の由来と歴史

仙台雑煮の歴史は江戸時代末期にさかのぼる。当時、松島湾ではハゼが豊漁で、焼きハゼを作る小屋が数多く立ち並んでいた。炭火で焼いたハゼを天日で干し、藁で連にして販売する習慣は、正月用の食材として広く定着した。こうして焼きハゼを出汁に使う雑煮が仙台の家庭に根付き、豪快な「ハゼ雑煮」として伝わるようになった。

また、阿武隈川を遡上するサケからとれるハラコ(イクラ)も仙台雑煮の重要な具材である。鮮やかな赤い粒は正月の祝い膳にふさわしく、雑煮に華やかさを添える。さらに、宮城特産の仙台せりは根まで食べる独特の食材で、爽やかな香りと食感が雑煮全体を引き締める役割を果たす。

「ひき菜」と呼ばれる大根・人参・ごぼうの細切りを湯通しして凍らせる食材も、仙台雑煮の大きな特徴だ。寒冷な気候を活かした保存法であり、凍らせることで味が染みやすくなる。これは宮城県全域に広がる「ひき菜雑煮」とも呼ばれる食文化で、地域ごとに出汁や具材が異なる。沿岸部では穴子やドンコ、山間部では鶏肉や雉肉を使うなど、土地の産物を活かした多様な雑煮が存在する。

一方で、伊達政宗公が食した雑煮は干しアワビや干しナマコ、ニシンの出汁を使った別のスタイルだったと記録されている。つまり仙台雑煮は庶民の間で広まった雑煮であり、地域の風土に根差した食文化として育まれてきた。

近年はハゼやサケの不漁で食材が高価になり、仙台雑煮は「高級雑煮」とも呼ばれるようになった。しかし、保存会や「みやぎの食を伝える会」などがイベントで作り方を伝え、伝統を守り続けている。仙台雑煮は、江戸時代から続く庶民の知恵と宮城の風土が生んだ食文化の結晶であり、今も正月三が日の食卓を彩り続けている。

レシピと作り方

仙台雑煮のレシピは家庭ごとに少しずつ異なるが、基本の作り方は共通している。材料は焼きハゼ、大根、人参、ごぼう、ずいき、凍み豆腐、紅白かまぼこ、ハラコ(イクラ)、仙台せり、餅など。これらを組み合わせて豪華な一椀を仕立てる。

まず「ひき菜」を準備する。大根・人参・ごぼうを細切りにして湯通しし、外気にさらして凍らせる。寒冷な冬の気候を活かした保存法で、凍らせることで繊維が壊れ、味が染みやすくなる。近年は冷凍庫を使う家庭も多い。年末の28日から30日にかけて仕込み、正月に備えるのが習わしだ。

次に焼きハゼで出汁を取る。炭火で焼いて干したハゼを水に浸し、15分ほど煮て旨味を抽出する。醤油、塩、酒で味を整えたら、ハゼを取り出しておく。この出汁が仙台雑煮の味の決め手となる。

具材の準備として、凍り豆腐は湯で戻して短冊切りにし、ずいきも戻して2cmほどに切る。紅白かまぼこは薄切りにし、せりは3cmほどに切る。餅は焼いて香ばしさを加える。

仕上げは、鍋に凍り豆腐やずいきを入れて煮立て、ひき菜を加えて味を染み込ませる。椀にひき菜を敷き、餅をのせ、焼きハゼ、かまぼこ、ハラコ、せりを彩りよく盛り付け、最後に汁をたっぷり注ぐ。餅が見えなくなるほど具材で覆うのが仙台流の盛り付けである。

仙台雑煮は、焼きハゼの香ばしい旨味、ひき菜の食感、ハラコの華やかさ、せりの爽やかさが一体となり、正月にふさわしい豪華な味わいを生み出す。家庭ごとの味付けの違いも魅力であり、宮城の冬を代表する食文化として今も受け継がれている。

味わいと食文化

仙台雑煮の魅力は、何といっても焼きハゼの香ばしい旨味が溶け込んだすまし仕立ての出汁にある。炭火で焼き、天日で干したハゼを煮出すことで、魚特有の淡白さに香ばしさと深みが加わり、雑煮全体の味を支える。椀に盛られた大きな焼きハゼは見た目にも豪快で、正月の「ハレの日」にふさわしい存在感を放つ。

そこに加わる「ひき菜」は、宮城ならではの食文化を象徴する食材だ。大根・人参・ごぼうを細切りにして湯通しし、冬の寒気にさらして凍らせる。凍らせることで繊維が壊れ、味が染みやすくなるため、雑煮全体に旨味が広がる。近年は冷凍庫を使う家庭も多いが、かつては自然の寒さを利用した保存法であり、宮城の冬の風土を活かした知恵でもある。

さらに、阿武隈川を遡上するサケからとれるハラコ(イクラ)が加わることで、赤い粒が椀の中に華やかさを添える。仙台せりは根まで食べる独特の食材で、爽やかな香りとシャキシャキとした食感が雑煮全体を引き締める。凍み豆腐やずいき、紅白かまぼこも加わり、具材は餅を覆い隠すほどに盛り付けられる。

仙台雑煮は、海の幸と山の幸をふんだんに使った豪華さが特徴であり、正月三が日の食卓を彩る文化的象徴となっている。地域によっては鶏肉や雉肉、穴子やドンコを出汁に使うなどバリエーションも豊富で、宮城全域に広がる「ひき菜雑煮」との関係も深い。仙台雑煮は単なる料理ではなく、宮城の風土と歴史を映す食文化の結晶であり、今も人々の心を温め続けている。

仙台雑煮が食べられるお店紹介

仙台雑煮は家庭料理として伝承されてきたが、近年は観光客や郷土料理ファンの間でも人気が高まり、提供する店も増えている。仙台市内では正月限定で仙台雑煮を出す郷土料理店があり、地元の人々だけでなく観光客もその味を楽しめる。

例えば、仙台駅周辺の郷土料理店では、焼きハゼを使った本格的な仙台雑煮を提供している。椀からはみ出すほどの大きな焼きハゼ、ハラコ、仙台せり、ひき菜が豪華に盛り付けられ、正月の雰囲気を味わえる。観光客にとっては、宮城の食文化を体験できる貴重な機会となっている。

また、「みやぎの食を伝える会」など保存会がイベントで仙台雑煮を振る舞うこともある。伝統的な作り方を学べるワークショップや試食会は、地元の人々だけでなく県外からの参加者にも人気だ。こうした活動は、仙台雑煮の保存と継承に大きな役割を果たしている。

さらに、観光施設やホテルのレストランでも正月限定メニューとして仙台雑煮を提供するところがある。高級食材となりつつある焼きハゼやハラコを使った雑煮は、特別感があり、正月の贅沢な料理として喜ばれている。

一方で、近年はハゼやサケの不漁により食材が高価になり、仙台雑煮は「高級雑煮」とも呼ばれるようになった。提供する店も工夫を凝らし、地元の食材を活かしながら伝統を守っている。仙台雑煮を食べられる店を訪ねることは、宮城の食文化を体験する旅の一部であり、観光の大きな魅力となっている。

まとめ

仙台雑煮は、宮城県仙台市を中心に伝わる郷土料理であり、正月三が日の食卓を彩る文化的象徴だ。椀からはみ出すほどの焼きハゼを豪快に盛り付け、香ばしい出汁を取る独特の調理法は、江戸時代末期から続く伝統である。さらに、阿武隈川を遡上するサケからとれるハラコ、宮城特産の仙台せり、凍らせて旨味を凝縮させた「ひき菜」などが加わり、豪華で滋味深い一椀となる。

仙台雑煮の由来は、松島湾のハゼ漁や阿武隈川のサケ漁に支えられた地域の食文化にある。伊達政宗公が食した雑煮は干しアワビやナマコを用いた別のスタイルだったが、庶民の間で広まったのがこの焼きハゼ雑煮だった。正月三が日に食べる習慣は宮城の冬の風物詩であり、地域の人々にとって欠かせない行事食となっている。

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近年はハゼやサケの不漁で食材が高価になり、仙台雑煮は「高級雑煮」とも呼ばれるようになった。しかし、保存会やイベントで伝統を守る活動が盛んに行われ、仙台雑煮は今も宮城の食文化を体験できる料理として観光客にも人気だ。仙台市内の郷土料理店やホテルのレストランでは正月限定で提供され、訪れる人々に宮城の冬の味覚を伝えている。

仙台雑煮は単なる料理ではなく、宮城の風土と歴史を映す文化遺産である。焼きハゼの香ばしさ、ハラコの華やかさ、せりの爽やかさ、ひき菜の食感が一体となり、正月にふさわしい豪華な味わいを生み出す。宮城を訪ねる旅で仙台雑煮を味わうことは、地域文化を体験する貴重な機会であり、宮城の魅力を世界へ伝える一歩となるだろう。

投稿者プロ フィール

東夷庵
東夷庵
地域伝統文化ディレクター
宮城県出身。京都にて老舗和菓子屋に勤める傍ら、茶道・華道の家元や伝統工芸の職人に師事。
地域観光や伝統文化のPR業務に従事。

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