【宮城県大崎市】難読地名「荒脛巾」の読み方・由来・語源をたどる旅in岩出山の荒脛巾神社

地名には、土地の記憶が編み込まれている──そう信じている私は、宮城県大崎市岩出山の一角にある「荒脛巾(あらはばき)」という地名に惹かれた。初めて地図でその名を見たとき、思わず目を留めた。「荒」と「脛巾」──荒々しい足元の布。地名にしては異様な響きだが、そこには古代信仰の痕跡が潜んでいるように思えた。

岩出山は、伊達政宗が仙台に移る前に居城を構えた地として知られ、城下町の風情と農村の静けさが共存する土地だ。盆地に広がる田畑、奥羽山脈から吹き下ろす風、そして鳴子温泉郷にも近い地理──その風土の中に、荒脛巾という名が静かに息づいている。

私はその名の由来を確かめるため、荒脛巾神社を訪ねた。田んぼの真ん中にぽつんと立つ社は、まるで農作物を見守る神のようだった。社のまわりには木々が植えられていて、奥羽山脈からの風を遮る「イグネ(屋敷林)」のような佇まいをしていた。地元の人は「神様が凍えないように植えたんだべ」と笑っていた。

地名は、風景と祈りの記憶を言葉にしたものだ。荒脛巾──その名に込められた意味を辿る旅が始まった。

大崎市岩出山荒脛巾

〒989-6404 宮城県大崎市岩出山下一栗荒脛巾

参考:東北地方整備局「男性性器をかたどった御神体を祭る神社もある。アラハバキ神」、多賀城陸奥総社宮「荒脛巾神社あらはばきじんじゃ - 多賀城市」松島観光ナビ「鹽竈神社の末社「荒脛巾神社」は足の神様 - 松島観光ナビ

荒脛巾の読み方

「荒脛巾」は「あらはばき」と読む。初めてこの地名に触れたとき、私はその音の荒々しさと、どこか古代的な響きに惹かれた。「脛巾(はばき)」とは、古代の衣装で脛に巻く布のこと。旅人や兵士が足を守るために身につけたものであり、地名に「荒」が冠されることで、険しい土地を歩く者の足元を象徴するような印象を受ける。

この地名は、宮城県大崎市岩出山の一角に位置する集落の名であり、地元では「あらはばきさま」と親しみを込めて呼ばれている。地名としては珍しく、東北地方に点在する「荒脛巾神(あらはばきしん)」への信仰と深く結びついている。

岩出山荒脛巾には、実際に「荒脛巾神社」が鎮座しており、地名はこの神社の存在に由来すると考えられる。つまり、神が祀られた場所が地名となり、信仰が風景に名を与えた例なのだ。

荒脛巾神社

〒989-6404 宮城県大崎市岩出山下一栗荒脛巾164

荒脛巾の語源・由来

「荒脛巾(あらはばき)」という地名は、東北地方に点在する「荒脛巾神(あらはばきしん)」に由来するとされる。荒脛巾神は、足の神・境界の神・道祖神として信仰されてきた存在であり、村の入口や峠、田畑の境界などに祀られることが多い。

「脛巾(はばき)」とは、古代の衣装で脛に巻く布のこと。旅人や兵士が足を守るために身につけたものであり、「荒脛巾」とは、荒々しい土地を歩く者の足元を象徴する言葉でもある。

ここで注目したいのが「荒」という字の意味だ。一般には「荒れた」「未開の」といった印象が強いが、東北の山岳信仰においては、むしろ「力強さ」「勇壮さ」を表す語感として用いられることがある。たとえば、宮城県の荒雄岳(あらおだけ)は、その名に「荒」を冠しながら、地元では山の神として敬われている。また、日本古語の「益荒男(ますらお)」は、勇ましく立派な男子を意味し、「荒」はその力強さを象徴する一字でもある。

つまり「荒脛巾」とは、ただの荒地の神ではなく、勇ましく境界を守る足の神──力強く歩む者を支える存在としての意味が込められている可能性がある。

岩出山荒脛巾には、実際に「荒脛巾神社」が鎮座しており、地名はこの神社の存在に由来すると考えられる。社の軒下には、脛に巻く布が何枚も括り付けられていた。これは、足の病が治ったお礼として奉納されたものだという。神社は田んぼの真ん中に立ち、まるで農作物を見守る神のような位置にある。

社のまわりには木々が植えられていて、奥羽山脈から吹き下ろす風を遮る「イグネ」のような役割を果たしている。地元の人は「神様が凍えないように植えたんだ」と語り、神社が地域の暮らしに溶け込んでいることを教えてくれた。

まとめ

荒脛巾という地名は、ただの呼称ではない。そこには、古代から続く信仰と、地域の人々のまなざしが編み込まれている。宮城県大崎市岩出山の一角にあるこの地は、伊達政宗が居城を構えた歴史を持ち、城下町の風情と農村の静けさが共存する土地だ。その盆地の中に、田んぼの真ん中にぽつんと立つ荒脛巾神社がある。

神社のまわりには木々が植えられていて、奥羽山脈から吹き下ろす風を遮る「イグネ(屋敷林)」のような役割を果たしている。地元の人は「神様が凍えないように植えたんだべ」と語り、神社が地域の暮らしに溶け込んでいることを教えてくれた。社の軒下には、脛に巻く布が何枚も括り付けられており、足の病が治ったお礼として奉納されたものだという。

「荒脛巾」という名は、東北に広く分布する「荒脛巾神」に由来し、足の神・境界の神として信仰されてきた。「荒」は未開や異界、勇ましさを意味し、「脛巾」は旅人の足元を守る布。地名は、境界を越える者への祈り、あるいは境界を守る神への畏れを言葉にしたものなのだ。

私は荒脛巾神社に立ち、風に揺れる木々の音を聞きながら、地名が語る祈りの記憶に耳を澄ませた。荒脛巾──その名には、足元の祈りと風土の記憶、そして人々の優しさが静かに息づいている。

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