【宮城県塩釜市】日本唯一の塩神事「藻塩焼神事」を訪ねるin鹽竈神社・御釜神社・フルーツラボラトリー

宮城県塩竈市には、藻塩を使った商品が数多く並ぶ。藻塩せんべい、藻塩ジェラート、藻塩チョコレート──そのどれもが、塩竈という町が「塩」に特別な意味を込めていることを物語っている。私はその背景にある「藻塩焼神事」に強く惹かれた。

藻塩焼神事は、塩竈の名の由来ともされる御釜神社の神釜で汲まれた海水を、塩釜神社の境内で古代の製法に則って焼き上げる、日本唯一の塩づくり神事である。塩釜神社は陸奥国一之宮として古代より鎮座し、東北の鎮守社として伊達政宗をはじめ多くの人々に崇敬されてきた。御釜神社はその別宮であり、塩づくりの神聖な場を担っている。

私はこの神事を実際に見てみたいと思い、塩竈の町を訪れた。塩釜神社の石段を登り、社殿の荘厳さに圧倒され、御釜神社の神釜に宿る静けさに耳を澄ませる。塩づくりが神事として残るこの町には、生活と信仰が重なり合う深い文化の層があった。

藻塩焼神事をたどることは、宮城の文化の源流に触れることでもある。私はその場に立ち会いながら、塩竈という町の本質に触れたような気がした。

参考

宮城県観光協会「藻塩焼神事 '25.7.4(金)~6(日)

東北歴史博物館「鹽竈神社藻塩焼神事 - 東北歴史博物館 - 宮城県

日本藻類学会「御竃神社の藻塩焼神事とアカモク

塩釜神社とは

藻塩焼神事は「もしおやきしんじ」と読む。

塩釜神社は、宮城県塩竈市に鎮座する神社で、陸奥国一之宮として古くから崇敬を集めてきた。主祭神は塩土老翁神(しおつちおじのかみ)──海路を開き、製塩の技を伝えたとされる神である。境内には、別宮・左宮・右宮の三本殿が並び、朱塗りの楼門や石段が荘厳な空気を醸し出している。

伊達政宗も深く信仰したとされ、仙台藩の守護神として位置づけられていた。現在も、初詣や七五三、祭礼などで多くの参拝者が訪れる。塩釜神社は、塩竈の町の精神的な中心であり、藻塩焼神事の神聖な舞台でもある。

鹽竈神社

所在地:〒985-8510 宮城県塩竈市一森山1−1

電話番号:0223671611

御釜神社とは──神釜に宿る塩の記憶

御釜神社は、塩釜神社の別宮であり、塩づくりの神事を司る場所として知られている。境内には「神釜」と呼ばれる四口の鉄釜があり、ここに海水を注ぎ、塩を煮詰めることで神聖な塩が生まれる。釜は常に水を湛えており、枯れることがないとされる。

この神釜は、藻塩焼神事の起点であり、塩竈の名の由来ともなった場所だ。御釜神社は小さな社ながら、塩の神秘と信仰が凝縮された空間であり、塩竈の文化の核をなしている。

所在地:〒985-0052 宮城県塩竈市本町6−1

電話番号:0223671611

藻塩焼神事とは──日本唯一の塩づくり神事

藻塩焼神事は、毎年7月4日から6日にかけて行われる、日本唯一の塩づくり神事である。御釜神社で汲まれた海水を、塩釜神社の境内に設けられた藻塩焼場に運び、古代の製法に則って塩を焼く。使用されるのはホンダワラなどの海藻で、これに海水を注ぎ、炊き上げて塩を抽出する。

この神事は、塩土老翁神に捧げる神聖な塩をつくる儀式であり、製塩技術の伝承でもある。神職と氏子が協力し、火を焚き、藻塩を焼くその姿は、まさに神と人がともに塩をつくる瞬間だ。

藻塩焼神事に行ってみた

私が塩竈を訪れたのは、藻塩焼神事の初日──7月4日の朝だった。塩釜神社の境内には、すでに藻塩焼場が設けられ、白装束の神職たちが静かに準備を進めていた。空気は澄み、境内のケヤキの葉が風に揺れている。神事が始まる前から、場には張り詰めたような静けさが漂っていた。

藻塩焼神事は、御釜神社で汲まれた海水を、塩釜神社の境内に運び、古代の製法で塩を焼くという日本唯一の神事である。使用されるのはホンダワラなどの海藻。これに海水を注ぎ、炊き上げて塩を抽出する。火、水、藻──そのすべてが神聖な素材となり、神に捧げる塩が生まれる。

神職が火を焚き始めると、藻の上に海水が注がれ、じわじわと炊き上がっていく。煙が立ちのぼり、藻塩の香りが境内に広がる。火の音、水の沸騰する音、風に揺れる葉の音──それらが重なり合い、まるで神話の中にいるような感覚に包まれた。

見学者は静かにその様子を見守り、神職の所作に目を凝らす。塩が焼き上がるまでの時間は、まるで祈りのようだった。神職が火を見つめる姿、海藻をかき混ぜる手の動き、塩が結晶化していく過程──そのすべてが、神と人がともに塩をつくる儀式のように感じられた。

この神事は、単なる再現ではない。塩竈の町が、塩とともに生きてきた歴史そのものを、神事として今に伝えている。塩は、生活の中にある素材でありながら、ここでは神聖なものとして扱われている。その境界が曖昧になる瞬間──それが藻塩焼神事の核心なのだと思った。

藻塩ソフトクリームアイス

神事の余韻を胸に、私は近くの「Gelateria Fruits Laboratory(ジェラテリア フルーツラボラトリー)」へ向かった。塩竈の町で人気のジェラート店で、藻塩を使ったフレーバーがあると聞いていた。

注文したのは「藻塩ミルク」と「藻塩生キャラメルアーモンド」。藻塩ミルクは、まろやかな甘さの中に、藻塩のミネラル感がふわりと広がる。塩味が甘さを引き締め、後味はすっきり。藻塩生キャラメルアーモンドは、濃厚なキャラメルのコクに、藻塩の粒がアクセントとなり、アーモンドの香ばしさと絶妙に調和していた。

神事で見た塩が、こうして味覚としても町に根づいていることに、私は深い感動を覚えた。塩竈は、塩を神に捧げ、塩を味わい、塩とともに生きる町なのだ。

所在地:〒985-0052 宮城県塩竈市本町3−5

電話番号:0223494952

まとめ

藻塩焼神事を見て、私は塩竈という町の本質に触れたような気がした。塩は、食の根幹であると同時に、古代から神事や祭祀に欠かせない聖なる素材でもある。塩釜神社と御釜神社は、その塩を神に捧げる場であり、町の精神的な中心でもある。

藻塩焼神事は、神職と氏子が協力し、古代の製法で塩を焼くという、日本唯一の神事だ。火と水と藻──そのすべてが神聖な素材となり、塩が焼き上がるまでの時間は、まるで祈りのようだった。私はその場に立ち会いながら、塩という素材が、いかに神聖で、文化的な意味を持つかを実感した。

神事の後に訪れたジェラート店「Gelateria Fruits Laboratory」で味わった藻塩ミルクと藻塩生キャラメルアーモンドは、塩竈の文化が味覚としても町に根づいていることを教えてくれた。神事で見た塩が、日常の甘味に姿を変えている──その重層的な文化のあり方に、私は深い感動を覚えた。

塩竈は、塩を神に捧げ、塩を味わい、塩とともに生きる町なのだ。藻塩焼神事は、単なる伝統行事ではなく、宮城の文化の源流を今に伝える生きた記憶である。塩釜神社の石段を登り、御釜神社の神釜を覗き、藻塩を焼く火を見つめたこの旅は、塩竈という町の深さと、宮城という土地の文化の力を教えてくれた。

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