【宮城県】セリの根っこは食べれるのか?洗い方や作り方、栄養や食べ方、注意点を解説!実際に仙台でせり鍋で根っこを食べる

ぶりのせり鍋
ぶりのせり鍋

冬の仙台を訪れたとき、街の空気は澄み渡り、冷たい風が頬を撫でていた。そんな季節にこそ味わいたい郷土料理が「せり鍋」である。今回足を運んだのは仙台市内の和食店「寿寿」。ここでは旬のぶりを使った特製のせり鍋が提供されており、冬の味覚と宮城の伝統が一度に楽しめる。鍋の中で脂の乗ったぶりをしゃぶしゃぶにし、せりの根っこや茎、葉と合わせて食べる瞬間は、まさに冬の仙台ならではの贅沢な体験だった。

せり鍋の最大の特徴は、根っこまで食べることにある。一般的な鍋料理では葉や茎を中心に使うが、宮城のせり鍋では白く伸びた根を丁寧に洗い、短時間で茹でて食べる。シャキシャキとした歯ごたえと独特の香りが口の中に広がり、ぶりの旨味と重なり合うことで、他では味わえない深い調和が生まれる。ポン酢につけて食べると爽やかな酸味が加わり、根の旨味がさらに引き立つ。

「寿寿」ではせりだけを追加注文できるのも魅力だ。根と葉だけが別皿で運ばれてきて、鍋に加えると再び新鮮な香りが立ち上る。食べ進めるほどに、せりの根が持つ力強さと繊細さを実感する。冬の寒さの中で食べるせり鍋は、体を温めるだけでなく、土地の記憶や季節の恵みを感じさせてくれる。仙台の冬を旅するなら、せり鍋は欠かせない一品だと強く思った。

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参考

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セリとは?栄養と特徴

セリはセリ科の多年草で、日本原産の野菜として古くから親しまれてきた。春の七草のひとつとして「七草がゆ」に用いられることでも知られ、無病息災を願う食文化に深く結びついている。名前の由来は「競り合うように伸びる」姿からとされ、清流や湿地、水田の畦道など水分の多い場所に群生する。鮮やかな緑の葉と白い根のコントラストが美しく、見た目にも清々しい野菜だ。

栄養面でも非常に優れている。βカロテン、ビタミンK、ビタミンC、葉酸、カリウムなどを豊富に含み、抗酸化作用や免疫力向上、貧血予防などが期待できる。食物繊維も多く、腸内環境を整える効果もある。見た目は繊細だが、栄養価は高く、冬の寒さに耐えて育つせりは特に旨味が増すとされる。

食味の特徴は、爽やかな香りとシャキシャキとした歯ごたえ。葉は柔らかく、茎は香りが強く、根は旨味が凝縮されている。部位ごとに異なる味わいを楽しめるのがせりの魅力であり、鍋料理にするとその個性が際立つ。特に冬に収穫される「根せり」は、寒さに耐えて育ったため甘みが増し、根の部分まで美味しく食べられる。宮城県名取市は全国有数のせりの産地であり、令和6年には「仙台せり」が農林水産省の地理的表示(GI)保護制度に登録された。これは地域ブランドとしての価値が認められた証であり、宮城の食文化を象徴する存在となっている。

参考

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宮城のせり鍋の歴史

宮城県せり鍋は、根っこまで食べる独特の文化を持つ郷土料理として知られている。名取市を中心にせり栽培の歴史は古く、元和年間(1620年)には野生のせりを栽培していた記録が残り、安永年間(1770年)には栽培が広く普及したとされる。仙台藩主・伊達政宗が連歌の席でせりを詠んだ文献もあり、藩政時代からせりは人々の暮らしに深く根づいていた。

せり鍋が郷土料理として定着した背景には、冬の寒さに耐えて育つ「根せり」の存在がある。9月から3月にかけて収穫される根せりは、茎や葉だけでなく根まで食べられるのが特徴。根はシャキシャキとした食感と旨味を持ち、鍋に入れることで出汁に独特の風味を加える。葉や茎は短時間でしゃぶしゃぶのように食べると香りが際立ち、部位ごとに異なる味わいを楽しめる。

名取市では根っこまで食べる「せり鍋」が新名物として広まり、観光資源にもなっている。せり鍋火ブーム付け役の名取市三浦農園さんによると、せりの美味しい食べ方をお店に直接レクチャーしており、多いときには1日で20を超える料理店をまわったとか。仙台市内の飲食店でも提供されるようになり、冬の味覚として定着した。せり鍋は単なる料理ではなく、土地の風土と人々の知恵が生んだ文化の結晶である。根まで食べるという発想は、食材を余すことなく活かす東北の暮らしの知恵を映している。

現代では「仙台せり」がブランド化され、全国的にも注目されるようになった。せり鍋は宮城の冬を象徴する料理として、地元の人々だけでなく観光客にも愛されている。根っこまで食べる文化は、宮城の食の豊かさと歴史を体感できる貴重な食文化であり、未来へと受け継がれていくべき郷土の誇りなのだ。

参考

インタビュー09_三浦隆弘さん - 宮城県公式ウェブサイト

実際に仙台「寿寿」で食べた「ぶりのせり鍋」

冬の仙台を訪れた際、私は和食店「寿寿」で名物のせり鍋を味わった。鍋の主役は旬のぶり。脂がしっかりと乗ったぶりの切り身をしゃぶしゃぶにして、せりと合わせて食べるという贅沢な一品だ。鍋の中でぶりを軽く火に通すと、表面はほんのり白くなり、中心はまだ艶やかな赤身を残す。その瞬間にポン酢へとくぐらせ、せりの根や葉と一緒に口に運ぶ。ぶりの濃厚な旨味と、せりの爽やかな香り、そして根っこのシャキシャキとした食感が重なり合い、冬の仙台ならではの味覚が広がった。

「寿寿」ではせりだけを追加注文できるのも特徴的だ。根と葉だけが別皿で運ばれてきて、鍋に加えると再び新鮮な香りが立ち上る。根の部分は短時間で茹でると歯ごたえが残り、噛むほどに旨味が染み出す。葉は軽くしゃぶしゃぶするだけで柔らかく、ぶりの脂を受け止めて爽やかに調和する。鍋を囲みながら、せりの部位ごとの違いを楽しむことができるのは、宮城ならではの食文化だと感じた。冬の寒さの中で食べるせり鍋は、体を温めるだけでなく、土地の記憶と季節の恵みを体感させてくれる。

所在地: 〒980-0811 宮城県仙台市青葉区一番町4丁目5−2 第2 むさし商事第二むさしビル 1F

電話番号: 022-721-9202

せりの洗い方・下ごしらえ・下処理のコツ

せり鍋を美味しく食べるためには、根っこの下ごしらえが欠かせない。せりは水辺で育つため、根の部分には泥や細かな砂が付着していることが多い。まずは流水で丁寧に洗い、根の細部まで歯ブラシや竹串などを使って泥を落とす。特に白い根の部分は繊細なので、強くこすらず優しく洗うのがポイントだ。

下ごしらえでは、根を切り落とさずにそのまま使うのが宮城流。鍋に入れる際は、根を20秒ほどさっと茹でる程度に留める。長く煮すぎると食感が失われるため、短時間で火を通すことが重要だ。茎は香りが強いため、しゃぶしゃぶ感覚で10秒ほど火を通すと爽やかさが際立つ。葉はさらに短時間で、鍋の出汁に軽くくぐらせるだけで十分。部位ごとに火の通し方を変えることで、せりの持つ香りと食感を最大限に楽しむことができる。

また、せりは鮮度が命。購入したらできるだけ早く調理することが望ましい。保存する場合は冷蔵庫で立てて水を含ませた状態にすると、シャキシャキ感を保ちやすい。下ごしらえの丁寧さが、せり鍋の美味しさを決定づけると言っても過言ではない。

参考

河北新報「セリの根っこってどう洗えばいい? 【特集】滋味あふれる

注意点──せりを美味しく食べるために

せり鍋を楽しむ際には、いくつかの注意点がある。まず大切なのは「煮すぎないこと」。せりは火を通しすぎると香りが飛び、食感も失われてしまう。筆者の感覚ではあるが、根は1分程度、茎は10秒、葉は数秒程度と、部位ごとに短時間煮て食べた方が美味しいと聞いた。実際に食材の鮮度や

次に、香りの強い具材との組み合わせには注意が必要だ。せりは独特の爽やかな香りを持つため、にんにくや強いスパイスなどを加えると風味が損なわれる。鍋の具材は鶏肉や鴨肉、ぶりなど、せりの香りを引き立てる食材が適している。

また、せりは鮮度が落ちやすい野菜であるため、購入後はできるだけ早く食べることが望ましい。保存する際は冷蔵庫で立てて水を含ませるなど工夫が必要だ。根の部分は特に傷みやすいため、調理前に必ず泥を落とし、清潔にしてから使うことが重要である。

最後に、せりは栄養価が高い一方で、独特の香りやほろ苦さがあるため、初めて食べる人には少量から試すのがおすすめだ。慣れてくると、その爽やかさと食感が癖になり、鍋料理に欠かせない存在になる。せり鍋は宮城の冬を象徴する料理であり、注意点を守ることでその魅力を存分に味わうことができる。

参考

根っこまでおいしい宮城の在来野菜「せり」|特集

まとめ

仙台の冬に味わった「せり鍋」の体験は、単なる食事ではなく、宮城という土地の文化と歴史を体感する旅そのものだった。和食店「寿寿」でいただいたぶりのせり鍋は、脂の乗った旬のぶりをしゃぶしゃぶにし、せりの根・茎・葉と合わせて食べるという贅沢な一品。特に根っこを食べるという文化は、他の地域ではあまり見られない宮城独自の食べ方であり、シャキシャキとした歯ごたえと旨味がぶりの濃厚さと絶妙に調和していた。ポン酢につけて食べると爽やかな酸味が加わり、冬の寒さの中で一層美味しさが際立った。

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せりは「春の七草」として古くから親しまれ、日本原産の多年草である。名取市では江戸時代初期から栽培が始まり、安永年間には広く普及したとされる。仙台藩主・伊達政宗が連歌の席でせりを詠んだ記録も残り、藩政時代から人々の暮らしに深く根づいていた。現代では「仙台せり」がブランド化され、令和6年には農林水産省の地理的表示(GI)保護制度に登録されるなど、地域の誇りとして全国に知られる存在となっている。

せり鍋の魅力は、根・茎・葉を余すことなく食べられる点にある。根はシャキシャキとした食感と旨味、茎は爽やかな香り、葉は柔らかく繊細な味わいを持ち、部位ごとに異なる楽しみ方ができる。洗い方や下ごしらえにも工夫があり、根は泥を丁寧に落とし、短時間で茹でることで食感を残す。茎や葉はしゃぶしゃぶ感覚で軽く火を通すのが基本で、煮すぎないことが美味しさの秘訣だ。

栄養面でもせりは優れており、βカロテンやビタミンK・C、葉酸、カリウムなどを豊富に含む。抗酸化作用や免疫力向上、貧血予防などが期待でき、冬の寒さに耐えて育つ根せりは特に甘みが増している。まさに健康と美味しさを兼ね備えた食材であり、宮城の食文化を象徴する存在だ。

今回の体験を通じて感じたのは、せり鍋が単なる料理ではなく、土地の風土と人々の知恵が生んだ文化の結晶であるということ。根まで食べるという発想は、食材を余すことなく活かす東北の暮らしの知恵を映しており、宮城の冬を象徴する食文化として未来へと受け継がれていくべきものだ。仙台の街で味わったせり鍋は、体を温めるだけでなく、土地の記憶と季節の恵みを体感させてくれる、まさに旅の締めくくりにふさわしい一品だった。

投稿者プロ フィール

東夷庵
東夷庵
地域伝統文化ディレクター
宮城県出身。京都にて老舗和菓子屋に勤める傍ら、茶道・華道の家元や伝統工芸の職人に師事。
地域観光や伝統文化のPR業務に従事。

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