【宮城県大崎市】川渡温泉の菜の花フェスティバルに行ってきた

宮城県大崎市鳴子温泉郷の1つ川渡温泉菜の花畑フェスティバル

春になると、私はどうしても大崎市へ向かいたくなる。地域文化ライターとして、伝統的・民族的な慣習が今も息づく土地を歩くのが好きだが、宮城県内で特に惹かれるのが鳴子温泉エリアだ。歴史や風習が残っているだけではなく、現代の暮らしの中に自然に受け継がれている。その“脈々と続く感じ”が、私を何度もこの地へ呼び戻す。

古川から国道47号線を西へ。奥羽山脈へ向かって伸びるこの道は、走るたびに不思議な気持ちになる。平野から山へ、現代から古代へ、時間の層をゆっくりと遡っていくような感覚だ。車窓の景色が変わるたびに、土地の記憶が少しずつ濃くなっていく。

春の川渡温泉には、もうひとつの楽しみがある。江合川の河川敷に広がる菜の花フェスティバルだ。川沿いに一面の菜の花が咲き、堤防には桜が並ぶ。黄色と桜色が重なる景色は、東北の春の短さと濃さを象徴している。

私は毎年、この景色を見に行く。菜の花が咲く河川敷は、ただの“花畑”ではない。古代には玉造郡が置かれ、義経伝説も息づく江合川──かつて玉造川、荒雄川と呼ばれたこの川のほとりで、春は千年以上も繰り返されてきた。菜の花の黄色の向こうに、そんな歴史の層が静かに横たわっている。

だから私は、春になると川渡温泉へ向かう。 花を見に行くというより、土地の記憶に触れに行くのだ。

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参考

おおさき鳴子温泉 菜の花フェスティバル実行委員会

Facebook「おおさき鳴子温泉 菜の花フェスティバル実行委員会

川渡温泉とは?

川渡温泉(かわたびおんせん)は、鳴子温泉郷の中でも素朴で静かな湯治場として知られているが、その地名には古代から続く地形と暮らしの記憶が刻まれている。「川渡」という名は、まさに“川を渡る場所”を意味する。江合川──かつて玉造川、荒雄川と呼ばれたこの川を渡り、対岸へ行くための渡し場があったのだろう。

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この地域は、古代には玉造郡(たまつくりぐん)と呼ばれ、平安期の記録にもその名が残る。玉造という名は、勾玉や玉類の生産地に由来するとも言われ、古代の文化圏として重要な地域だった。江合川はその中心を流れ、人々の生活・交通・信仰を支えてきた。

また、この川沿いには義経伝説も多く残る。源義経が奥州へ落ち延びる際、この川を渡ったという伝承がいくつも語られている。川渡温泉の周辺には、義経ゆかりの地名や伝承が点在し、土地の人々の記憶の中に今も息づいている。

川渡温泉は、観光地としての華やかさよりも、こうした“土地の歴史の厚み”が魅力だ。湯治文化が今も残り、共同浴場には地元の人々が集う。温泉街というより、川とともに暮らしてきた集落の延長に湯がある、そんな雰囲気が漂う。

菜の花フェスティバルが行われる江合川の河川敷も、まさにこの地形と歴史の延長線上にある。 川渡温泉は、川と人の暮らしが重なり合って生まれた土地なのだ。

菜の花フェスティバルとは?

宮城県大崎市鳴子温泉郷の1つ川渡温泉菜の花畑フェスティバルと桜
宮城県大崎市鳴子温泉郷の1つ川渡温泉菜の花畑フェスティバルと桜

川渡温泉の春を象徴するのが、江合川河川敷で行われる菜の花フェスティバルだ。毎年春の定例イベントとして地域に根づき、地元の人々が丹精込めて育てた菜の花が一面に咲き誇る。観光イベントというより、地域の暮らしがそのまま表に出てきたような素朴さが魅力だ。

菜の花畑は、河川敷いっぱいに広がる。黄色い花が風に揺れ、甘い香りが漂う。堤防には桜が並び、満開の花びらが菜の花の海にそっと降りていく。菜の花と桜が同時に咲く景色は、東北の春の短さと濃さを象徴している。

フェスティバルでは、地元農家の野菜や漬物、山菜、味噌などが並ぶ。子どもたちが菜の花の間を走り回り、年配の人たちは川風に吹かれながら世間話をしている。ここには“観光地の賑わい”ではなく、“土地の春を祝う時間”が流れている。

2026年の菜の花フェスティバルは4月18日~26日に開催予定で、川渡温泉まち歩きスタンプラリー、キッチンカー等、飲食ブース出店、菜の花ガーデンライブ、凧あげ体験が開催されるようだ。

川渡温泉河川敷菜の花畑

所在地:〒989-6711 宮城県大崎市鳴子温泉川渡

参考:【今年の菜の花ガーデンは、4/18(土)~4/26(日)】 | おおさき鳴子温泉 菜の花フェスティバル実行委員会

川渡菜の花畑フェスティバルを訪ねる

宮城県大崎市鳴子温泉郷の1つ川渡温泉菜の花畑フェスティバルと桜と青空
宮城県大崎市鳴子温泉郷の1つ川渡温泉菜の花畑フェスティバルと桜と青空

菜の花フェスティバルの会場に足を踏み入れると、まず目に入るのは一面の黄色い花畑だが、しばらく歩くと、もうひとつの“春の景色”が現れる。河川敷の一角に並ぶ、地元の人々による屋台と出店だ。観光地のイベントでよく見る派手なテントではなく、地域の暮らしがそのまま表に出てきたような素朴な店構え。そこに、この土地の温かさがにじんでいる。

テーブルには、地元の農家が育てた野菜や山菜が並ぶ。ふきのとう、うるい、こごみ──春の山の香りがそのまま袋に詰まっている。漬物や味噌、手作りの餅もあり、どれも“家庭の味”がそのまま伝わってくるようだ。売り手は地元のお母さんたちで、客との会話が自然に弾む。「今年は雪が少なかったから、山菜が早いのよ」「この味噌は昔から家で作ってるの」。そんな言葉が、菜の花の香りと一緒に風に乗って流れていく。

子どもたちは菜の花の間を駆け回り、年配の人たちは川風に吹かれながら世間話をしている。屋台の周りには、地域の人々の生活のリズムがそのまま流れている。観光客向けの“見せるイベント”ではなく、地域の人々が春を祝い、季節を分かち合うための場なのだと実感する。

特に印象的なのは、菜の花を使った加工品や、地元の農家が丹精込めて育てた野菜の販売だ。どれも大量生産ではなく、土地の気候と人の手が作り上げたものばかり。菜の花畑の美しさと同じように、ここに並ぶ食べ物もまた、この土地の春の恵みそのものだ。

屋台の温かさは、菜の花の黄色とは違う、もうひとつの“春の色”だ。 川渡温泉の菜の花フェスティバルは、花を見るだけでなく、地域の暮らしに触れることができる貴重な時間でもある。

菜の花畑の向こうには江合川が流れている。かつて玉造川、荒雄川と呼ばれたこの川は、古代から人々の生活を支え、旅人を運び、伝説を生んできた。川渡という地名が“川を渡る場所”から生まれたことを思い出すと、菜の花の景色の奥に、千年以上の時間が静かに横たわっているように感じられる。

風が吹くと、菜の花が一斉に揺れ、川面もきらきらと光る。 その瞬間、春の大崎が持つ“土地の生命力”が全身に染み込んでくる。

アクセスと駐車場情報

川渡温泉の菜の花フェスティバルへ向かう道のりは、春の大崎を感じる旅そのものだ。古川から国道47号線を西へ進むと、平野の景色が徐々に山の気配を帯びてくる。奥羽山脈へ向かうこの道は、走るたびに“時間を遡るような”不思議な感覚を与えてくれる。現代の街並みから、古代の玉造郡へと続く歴史の層が、風景の中に静かに現れる。

車でのアクセス 古川駅から川渡温泉までは車で約25〜30分。国道47号線をまっすぐ進み、川渡温泉の看板が見えたら左折する。菜の花フェスティバルの会場は江合川の河川敷で、期間中は臨時駐車場が設けられることが多い。河川敷の駐車スペースは広く約40台ほど駐車可能。しかし晴れた週末は混雑するため、午前中の早い時間帯がおすすめだ。また近隣にある大崎市 川渡地区公民館の駐車場(約80台駐車可能)も2025年には開放されていたので合わせて下記に紹介する。

公共交通機関の場合 JR陸羽東線「川渡温泉駅」から徒歩20分ほど。駅周辺はのどかな田園風景が広がり、菜の花畑へ向かう道のりそのものが春の散歩になる。川沿いを歩くと、菜の花の香りが風に乗って漂ってくる。

駐車場

所在地: 〒989-6711 宮城県大崎市鳴子温泉川渡

大崎市 川渡地区公民館

〒989-6711 宮城県大崎市鳴子温泉川渡25−5

周辺のおすすめ観光スポット

菜の花畑の黄色い海をあとにして川渡温泉の集落へ戻ると、まず立ち寄りたいのが「川渡温泉共同浴場」だ。大人300円という昔ながらの料金で、湯治文化が今も息づく素朴な共同湯。湯船にはうぐいす色の硫黄泉が満ち、湯面からふわりと硫黄の香りが立ちのぼる。観光地の温泉とは違い、地元の人々が日常的に通う“生活の湯”で、湯に浸かると菜の花畑の風景が身体の奥にゆっくり沈んでいくような感覚になる。

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さらに足を伸ばすと、鳴子こけし文化に触れられる。最近人気なのが、川渡温泉からほど近い「cafegutto(カフェグット)」で体験できる“食べられるこけし最中”の絵付けだ。こけし型の最中に自分で絵を描き、そのまま食べられるというユニークな体験で、旅の記念にもなる。もちろん、伝統的な鳴子こけしの絵付けを楽しみたいなら、日本こけし館岩下こけし資料館へ向かうとよい。工人の技を間近で見ながら、自分だけの鳴子こけしを作る時間は、土地の文化に深く触れるひとときになる。

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自然の景観を求めるなら、鳴子温泉郷の奥にある火山湖・潟沼(かたぬま)がおすすめだ。季節や天候によって湖面の色が変わり、春は特に透明感のあるエメラルドグリーンが広がる。風が止むと湖面が鏡のように空を映し、菜の花畑とはまったく違う“鳴子の青”に出会える。

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まとめ

川渡温泉の菜の花フェスティバルを歩いていると、この土地が持つ“春の文化”が静かに立ち上がってくる。菜の花の黄色、桜の薄桃色、江合川のきらめきなどすべてが、土地の歴史と暮らしの記憶と結びついている。

川渡という地名は、かつて玉造川・荒雄川と呼ばれた江合川を“渡る場所”から生まれた。古代には玉造郡が置かれ、義経伝説も息づく。川は人々の生活を支え、文化を運び、時には物語を生んだ。その川のほとりで菜の花が咲き続けることは、千年以上続く土地の記憶が、春の景色として現れているように思える。

菜の花フェスティバルは、観光イベントのような派手さはない。 しかし、だからこそ“地域の春を祝う文化”がそのまま残っている。 地元の人々が育てた菜の花、手作りの漬物や山菜、川風に吹かれながら交わされる世間話。そのすべてが、この土地の暮らしの延長線上にある。

春の大崎は、冬の厳しさを越えた土地の生命力が一気に花開く季節だ。菜の花と桜が同時に咲く景色は、短い春を全力で迎え入れる東北の文化そのものだと感じる。川渡温泉の河川敷に立つと、春が“季節”ではなく“文化”として存在していることに気づく。

菜の花フェスティバルは、川渡温泉の春を象徴する風景であり、 この土地が大切にしてきた歴史・暮らし・祈りが重なり合って生まれた文化だ。 春の大崎を歩くなら、ぜひこの黄色い海の中に身を置いてほしい。 そこには、土地の記憶と季節の息づかいが静かに流れている。

投稿者プロ フィール

東夷庵
東夷庵
地域伝統文化ディレクター
宮城県出身。京都にて老舗和菓子屋に勤める傍ら、茶道・華道の家元や伝統工芸の職人に師事。
地域観光や伝統文化のPR業務に従事。

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