【宮城県】一生に一度の願いも叶うらしい仙台の西方寺を観光してきた!縁結びや子宝といったご利益や油揚げ、読み方や歴史、アクセスや駐車場情報、パワースポット天皇塚や貞能堂など紹介

仙台の街を離れ、山あいへと車を走らせると、空気が少しずつ変わっていく。市街地の喧騒が遠ざかり、窓を開ければ、山の匂いと川の音が混ざったような、どこか懐かしい気配が漂ってくる。今回の旅の目的地は、仙台市青葉区大倉にある西方寺──地元では「定義さん(じょうぎさん/じょうげさん)」と呼ばれ、古くから“一生に一度の願いも叶う”と語られてきた寺だ。
この寺の名前を初めて聞いたのは、仙台の友人からだった。「縁結びも子宝も、願いごとがあるなら一度は行くべき場所だよ」と、まるで秘密の場所を教えるように話してくれた。その言葉がずっと心に残っていた。願いが叶う寺。そんな場所が本当にあるのだろうか。半信半疑のまま、私は西方寺へ向かうことにした。
西方寺は、平家の落人・平貞能が隠れ住んだ地として知られ、彼の墓所に建てられた小堂が起源とされる。歴史の深さと、どこか物語めいた響きが、この寺を特別な場所にしているのだろう。さらに、境内には縁結びのパワースポット「天皇塚」や、気仙大工の彫刻が光る国登録有形文化財「貞能堂」、そして名物の三角あぶらあげなど、見どころが多い。
仙台駅から車で約50〜60分。山道を進むにつれ、旅の目的が“観光”から“祈り”へと静かに変わっていくような感覚があった。 願いを胸に、私は定義山へ向かった。
宮城県観光連盟「一生に一度の大願も叶うパワースポットといわれている定義山」
せんだい旅日和「定義如来 西方寺 | スポット一覧」
目次
西方寺とは?
西方寺は正式には「極楽山 西方寺」といい、浄土宗鎮西派の寺院だ。「さいほうじ」と読む。しかし、仙台の人々はほとんどこの正式名称を使わない。一般的には「定義如来(じょうぎにょらい/じょうげにょらい)」、あるいは親しみを込めて「定義山(じょうぎさん)」と呼ばれているようだ。
この“読み方問題”が実に興味深い。 地元の仙台弁では「定義」を“じょうげ”と読む。一方、観光案内や道路標識では“じょうぎ”と表記される。どちらが正しいというより、歴史と土地の言葉が混ざり合って生まれた二つの読み方なのだ。
寺があるのは仙台市青葉区大倉字上下(じょうげ)。この住所の読みが「じょうげさん」という呼び名の由来になった。一方、平貞能が名乗った「定義(さだよし)」を音読みして“じょうぎ”と呼ぶようになったという説もある。つまり、地名の読みと人物名の読みが重なり合い、二つの呼び方が自然に共存しているのだ。
場所は仙台駅から車で約50〜60分。大倉ダムを越えた先にあり、山あいの静かな集落の中に広がっている。周囲には民宿や門前町があり、参拝者を迎える雰囲気がどこか温かい。
西方寺は年間100万人近くが訪れる宮城屈指の観光地でありながら、どこか“地元の祈りの場”としての素朴さを残している。 読み方に揺らぎがあるのも、この寺が長い時間をかけて人々に親しまれてきた証なのだろう。
西方寺の歴史
西方寺の歴史を語るうえで欠かせないのが、平家の落人・平貞能(たいらのさだよし)の存在だ。平清盛・重盛に仕えた武将で、壇ノ浦の戦いで平家が滅亡したのち、この大倉の地に身を隠したと伝えられている。貞能はこの地で安徳天皇と平家一門の冥福を祈り、阿弥陀如来を安置した。これが西方寺の起源だ。
貞能は隠遁後、自らの名を「定義(さだよし)」と改めた。これが寺の呼び名の由来となり、人々は親しみを込めて「定義さん」と呼ぶようになった。 “じょうぎさん”という読みは、この「定義」を音読みしたものだ。
貞能は1198年に亡くなり、従臣たちは遺言に従って墓の上に小堂を建て、阿弥陀如来の宝軸を安置した。これが後に「貞能堂」となり、現在は国登録有形文化財として残っている。六角堂の背後に裏堂が増築された独特の構造で、気仙大工による緻密な彫刻が施されている。
その後、1706年に観蓮社良念が「極楽山 西方寺」として正式に開創。江戸時代から現代に至るまで、縁結び・子宝・安産祈願の寺として多くの参拝者を集めてきた。
さらに、境内の「天皇塚」には安徳天皇の遺品を埋めたという伝承があり、二本の欅が一本に結ばれた“連理の欅”が縁結びの象徴として信仰されている。
極楽山 西方寺(定義如来)
所在地:〒989-3213 宮城県仙台市青葉区大倉上下1
電話番号:0223932011
ご利益は本当にある?縁結び・子宝・安産祈願が人気の理由を現地で見た
西方寺が「一生に一度の願いも叶う寺」と呼ばれる理由。それは安置されている「定義如来」の縁結び・子宝・安産祈願のご利益が古くから語り継がれてきたからだろう。仙台市内でも“願いごとがあるなら定義さんへ”という言葉を耳にするほど、地元の人々に深く根付いていた。
境内を歩いていると、若いカップル、妊婦さん、家族連れ、そして一人で静かに祈りに来た人など、さまざまな参拝者の姿があった。観光地というより、願いを抱えた人々が自然と集まる雰囲気を感じた。
定刻に大本堂で参拝できる機会があり、多くの方が大本堂に祀られる「定義阿弥陀如来」を参拝していた。この阿弥陀如来は“願いを叶える如来様”として信仰され、縁結び・子宝・安産の祈願に訪れる人が絶えない。堂内には、子授け人形や安産枕が置かれており、願いを込めて借りていく人も多い。実際にSNSやネットでは「ここで祈ったら子どもを授かった」「良縁に恵まれた」という声が口コミとして広がっているようで、それらがさらに参拝者を呼んでいるのだろう。
パワースポット天皇塚

西方寺の境内の奥、裏山へと続く小道を進むと、ひっそりと佇む「天皇塚」が現れる。ここは、安徳天皇の遺品を埋めたと伝わる場所であり、古くから“縁結びのパワースポット”として知られている。
天皇塚の象徴となっているのが、二本の欅が途中で一つに結ばれた「連理の欅」。連理とは、別々の木が成長の過程で自然に結びつき、一つの木のようになる現象のこと。古来より“縁が結ばれる象徴”として尊ばれてきた。
実際に目の前に立つと、その存在感に圧倒される。二本の幹が寄り添い、まるで長い年月をかけて互いを支え合ってきたかのようだ。木の根元には、良縁を願う絵馬やお守りが静かに並び、訪れた人々の思いが積み重なっているのが分かる。
天皇塚の周囲は、境内の中でも特に静けさが深い。風が木々を揺らす音、鳥の声、遠くから聞こえる鐘の音──そのすべてが、祈りの空間を包み込んでいる。ここで願いを込めると、自然と心が落ち着き、願いが届くような気持ちになる。
所在地:〒989-3213 宮城県仙台市青葉区大倉上下2
国登録有形文化財「貞能堂」

西方寺の中でもひときわ異彩を放つ建物が、国登録有形文化財「貞能堂(さだよしどう)」だ。平貞能の墓所の上に建てられた小堂を起源とし、現在の建物は昭和2年(1927)に再建されたもの。六角堂の背後に方形の裏堂が増築された独特の構造で、外観からすでにただならぬ存在感を放っている。
貞能堂の魅力は、なんといっても気仙大工による緻密な彫刻だ。向拝の唐破風、柱に施された細工、軒下の彫刻──どれも驚くほど繊細で、建物全体が“彫刻の塊”のように見える。近づいて見ると、木の温もりと職人の息遣いが伝わってくるようだ。
所在地:〒989-3213 宮城県仙台市青葉区大倉上下
参考
文化遺産オンライン「定義如来西方寺御廟貞能堂 - 文化遺産オンライン」
山門・手水舎

西方寺の境内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのが立派な山門だ。昭和6年に完成したこの山門は、登録有形文化財にも指定されており、細部に至るまで丁寧な彫刻が施されている。門をくぐると、まるで別世界に入ったような感覚があり、旅の始まりを静かに告げてくれる。
山門を抜けて左手に進むと、龍の彫刻が印象的な手水舎がある。水の音が心地よく、参拝前に手を清めると、自然と気持ちが整っていく。手水舎の周囲には苔むした石灯籠が並び、まるで時間が止まったような静けさが漂っている。
名物・三角あぶらあげを食べてみた
西方寺を訪れたら、絶対に外せない名物がある。それが「三角あぶらあげ」だ。門前の店から漂ってくる香ばしい匂いに誘われ、参拝前でも参拝後でも、つい足が向いてしまう。明治23年から続く老舗の味で、仙台市民にとっては“定義さんといえば三角あぶらあげ”と言われるほど、深く根付いた名物だ。
店先では、揚げたてのあぶらあげが次々と油から引き上げられ、湯気を立てて並んでいる。注文すると、店員さんが熱々の三角あぶらあげを紙皿にのせ、七味と醤油をかけてくれる。表面はカリッと香ばしく、中はふわふわでジューシー。噛むと大豆の甘みがじゅわっと広がり、素朴なのに忘れられない味わいだ。
三角形の理由は、昔の丸鍋で効率よく揚げるために長方形の油揚げを三角に切ったことが始まりだという。偶然生まれた形が、今では定義山の象徴になっているのだから面白い。
天気の良い日は、外のベンチに座って食べるのもおすすめだ。山あいの澄んだ空気の中で頬張る揚げたてのあぶらあげは、参拝の余韻をさらに深めてくれる。門前町の活気と、素朴な味わいが旅の記憶にしっかり刻まれる。
アクセス解説
西方寺は仙台市中心部から離れた山あいにあるが、アクセスは意外とシンプルだ。公共交通機関を使う場合は、仙台駅西口バスターミナル14番乗り場から「定義」行きの市バスに乗るだけ。終点「定義」で下車すれば、目の前が西方寺の門前町だ。所要時間は約60分。山道を進むにつれ、街の景色が少しずつ自然に変わっていくのが旅情を誘う。
車で向かう場合は、東北自動車道「宮城IC」から国道48号線を山形方面へ進み、「熊ヶ根」信号を右折。そのまま大倉ダム方面へ向かうと、西方寺の案内板が見えてくる。仙台駅からは約50〜60分ほどで到着する。
ただし、山道はカーブが多く、大倉ダム沿いの道幅は狭い。冬季は路面凍結の可能性があるため注意が必要だ。また、休日や縁日、紅葉シーズンは道路が混雑しやすく、特に昼前後は渋滞が発生することもある。早めの出発がおすすめだ。
バスで訪れるメリットは、運転の心配がないこと。山道の景色を眺めながら、ゆったりと旅気分を味わえる。一方、車は自由度が高く、周辺の大倉ダムや自然散策と組み合わせた小旅行にも向いている。
参考
駐車場情報
西方寺は年間100万人近くが訪れる人気スポットだが、驚くほど駐車場が充実していた。境内周辺には普通車700台以上、大型車10台が停められる無料駐車場が整備されており、観光地としては非常に利用しやすい。
駐車場は門前町の手前に広がっており、どこに停めても徒歩数分で山門に到着する。初めて訪れる人でも迷いにくく、案内板も分かりやすい。週末や祝日は家族連れやカップルで賑わうが、駐車スペースが広いため、満車で困ることは少ない。
駐車場
所在地:〒989-3213 宮城県仙台市青葉区大倉堤沢11
まとめ
西方寺は“願いと物語が重なる場所”。歩いて分かったその魅力**
仙台の街から山あいへと向かう道のりは、まるで日常から少しずつ離れていく儀式のようだった。大倉川の流れを横目に進み、山の匂いが濃くなる頃、ようやく姿を現す西方寺。地元では「定義さん」と呼ばれ、古くから“一生に一度の願いも叶う”と語られてきた寺だ。実際に歩いてみると、その言葉が単なる噂ではなく、この土地に積み重なった祈りの歴史から自然に生まれたものだと分かる。
境内に足を踏み入れると、まず山門の重厚さに圧倒される。気仙大工の技が光る貞能堂、鐘楼堂の響き、龍が睨む手水舎、どれも長い年月を経てなお力強く、訪れる人を静かに迎えてくれる。大本堂に祀られる定義阿弥陀如来の前に立つと、空気がふっと澄み、胸の奥にあった願いが自然と浮かび上がってくるようだった。
そして、境内の奥にある天皇塚。二本の欅が一本に結ばれた“連理の欅”は、ただの木ではない。平家の悲しい歴史と、祈りを捧げ続けた人々の思いが宿り、縁結びの象徴として今も静かに立ち続けている。木の前に立つと、時間がゆっくりと流れ、願いがそっと受け止められるような感覚があった。
参拝の後に味わう三角あぶらあげもまた、この旅の大切な一部だ。揚げたての香ばしさ、門前町の活気、山あいの空気。そのすべてが西方寺の記憶として残る。祈りと食、歴史と日常が自然に混ざり合う場所は、そう多くない。
西方寺は、ただ“願いが叶う寺”ではない。 平貞能の物語、地元の人々の信仰、訪れる人の祈り。それらが重なり合い、静かに息づく場所だ。
願いを抱えて訪れる人も、ふらりと立ち寄った旅人も、ここで何かを受け取って帰る。 それはご利益という形かもしれないし、心の中に灯る小さな光かもしれない。
山あいの静けさの中で、そっと願いを置いていく。 西方寺は、そんな旅にふさわしい場所だった。
投稿者プロ フィール

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地域伝統文化ディレクター
宮城県出身。京都にて老舗和菓子屋に勤める傍ら、茶道・華道の家元や伝統工芸の職人に師事。
地域観光や伝統文化のPR業務に従事。
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