【宮城県仙台市】地名「勾当台」の読み方語源由来をたずねるin勾当台公園・定禅寺通り

仙台市青葉区の中心部にある「勾当台(こうとうだい)」という地名。地下鉄南北線の「勾当台公園駅」や、宮城県庁、仙台市役所などの行政機関が集まるこのエリアは、仙台の政治・文化の中枢として知られている。だが、その地名の響きには、どこか古風で、謎めいた余韻がある。私は地域文化ライターとして、地名に込められた記憶を辿ることをライフワークとしている。今回の探訪は、勾当台という難読地名の由来を探りながら、現地の空気を肌で感じる旅だった。

勾当台は、仙台市の都市計画の中心に位置し、定禅寺通りや東二番丁通りといった主要道路が交差する交通の要所でもある。周辺には勾当台公園が広がり、市民の憩いの場として親しまれている。春には桜、夏には緑陰、秋には紅葉、冬にはイルミネーションと、季節ごとに表情を変えるこの公園は、仙台の都市景観の象徴でもある。

だが、「勾当台」という地名の由来を知る人は意外と少ない。かつてこの地に住んでいた盲目の狂歌師・花村勾当の名に由来するという説があり、地名には人の記憶が刻まれている。地名は、ただのラベルではない。それは、土地に生きた人々の営みと文化の痕跡を語る語り部なのだ。

参考

仙台市「道路の通称として活用する歴史的町名の由来(《勾当台通》)」「2.勾当台公園の現況

所在地:宮城県仙台市青葉区

【宮城県仙台市】地名「定禅寺通り」の読み方や語源・由来をたずねるin青葉区・和菓子の売茶翁・仙台メディアテーク

仙台市青葉区の定禅寺通り(じょうぜんじどおり)は、かつて存在した定禅寺に由来する歴史ある地名。ケヤキ並木が美しいこの通りは、売茶翁の和菓子や仙台メディアテーク…

勾当台の読み方・語源・由来

「勾当台」と書いて「こうとうだい」と読む。仙台市青葉区の中心部に位置するこの地名は、現在では地下鉄南北線の「勾当台公園駅」や、宮城県庁・仙台市役所などの行政機関が集まる都市の中枢として知られているが、その語源には江戸時代の人物の記憶が刻まれている。

地名の由来は、江戸時代にこの地に住んでいた盲目の狂歌師・花村勾当(はなむらこうとう)にあるとされる。彼は仙台藩主・伊達政宗の時代に活躍した人物で、政宗の寵愛を受けたことで知られている。ある逸話によれば、政宗が花村に名を尋ねた際、「私は盲人の政一(まさかず)です」と答えたところ、政宗が「我は政宗、汝は政一。名に一字違いあり」と喜び、以後「勾当」と呼ばれるようになったという。

「勾当」とは、盲人の官位のひとつで、当時の社会制度においては音楽や按摩などの職能を持つ盲人に与えられる称号だった。花村勾当はその名を冠して仙台城下に住み、彼の居住地が「勾当台」と呼ばれるようになったとされる。

また、勾当台は仙台城の北東に位置し、鬼門除けの意味を込めて政宗が定禅寺とともに祈願寺を建立した場所でもある。定禅寺通りと勾当台通りが交差するこの地は、都市設計上も重要な意味を持っていた。地名に込められた人の記憶と都市の構造が重なり合うことで、勾当台という名は仙台の文化的アイデンティティを象徴する存在となっている。

参考

宮城県聴覚障害者情報センター「手話動画:仙台市街の道の名前が面白い!(2025年4月7日)

仙台国際センター「定禅寺通/勾当台公園 | 08月 | 2019年 | 杜都旅

勾当台公園をたずねる

地下鉄南北線・勾当台公園駅を出ると、目の前に広がるのは仙台市民にとって馴染み深い勾当台公園。私はこの地に何度も足を運んでいるが、季節ごとに表情を変える公園の風景には、いつも新鮮な感動がある。春には桜が咲き誇り、夏には緑陰が涼をもたらし、秋には紅葉が通りを彩る。冬にはイルミネーションが灯り、通り全体が幻想的な光に包まれる。

公園の中心には市民広場があり、昼休みにはビジネスマンやOLがベンチで弁当を広げ、休日には親子連れが芝生で遊ぶ姿が見られる。私はベンチに腰掛け、周囲の風景を眺めながら、かつてこの地に住んでいた盲目の狂歌師・花村勾当のことを思い出していた。彼が仙台藩主・伊達政宗に寵愛され、名を残したことで、この地が「勾当台」と呼ばれるようになったという逸話は、地名に人の記憶が刻まれていることを教えてくれる。

公園の北側には宮城県庁や仙台市役所が立ち並び、都市の行政機能が集約されている。一方、南側には定禅寺通りが走り、ケヤキ並木が通りを彩っている。私は定禅寺通りを少し歩き、老舗和菓子店「売茶翁」に立ち寄った。店内には季節の生菓子が並び、私は「栗きんとん」と「柿の葉餅」を選んだ。店主は「この辺りは昔から文化の香りがする場所ですよ」と語ってくれた。

再び公園に戻り、和菓子を手に芝生に腰を下ろすと、都市の中にある静けさと文化の調和を感じるひとときが訪れた。公園内には「平和祈念像」や「谷風像」などの彫刻作品が点在しており、芸術と都市景観が融合した空間となっている。私はそれらの作品を眺めながら、仙台という都市が持つ文化的な奥行きに思いを馳せた。

勾当台という地名は、ただの地理的な記号ではない。それは、人の記憶と都市の構造が重なり合うことで生まれた、仙台の誇りなのだ。公園を歩きながら、私はこの町の歴史と文化の層に触れていた。

所在地:〒980-0014 宮城県仙台市青葉区本町3丁目

まとめ

勾当台という地名を歩いてみて、私は仙台という都市の記憶の深さに改めて感動した。かつてこの地に住んでいた盲目の狂歌師・花村勾当の名が、地名として残されていること。その名が、政宗との交流を通じて都市の記憶となり、今もなお人々の暮らしの中に息づいていること——それらに触れたとき、私はこの町の奥行きと文化の豊かさを実感した。

勾当台公園は、仙台市の行政機能と文化施設が集まる都市の中心でありながら、市民の憩いの場としても機能している。公園内には花壇や野外音楽堂、彫刻作品などが整備され、季節ごとに表情を変える風景が広がっている。私は売茶翁の和菓子を手に、公園のベンチで一服しながら、都市の中にある静けさと文化の調和を感じていた。

地名は、ただのラベルではない。それは、土地に生きた人々の営みと文化の痕跡を語る語り部なのだ。勾当台という名を口にするたび、私はこの町の誇りと、そこに生きた人々の記憶を思い出す。そしてその声は、これからもこの町を歩く人々の心に、そっと語りかけてくれるだろう。

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