【宮城県大崎市】鳴子温泉の最古級の温泉「姥の湯」に行ってきた!泉質や日帰り入浴、義経や弁慶の伝説、鳴子の由来を紐解く、アクセスや駐車場も解説!」

宮城県大崎市鳴子温泉の姥の湯の啼子の碑

地域文化ライターとして各地を歩いていると、日本の温泉地には単なる「湯治場」以上の物語が宿っていることに気づく。湯の色、匂い、地形、そしてそこに生きた人々の記憶──それらが折り重なって、土地ごとの文化を形づくっている。鳴子温泉郷は、その中でも特に“物語の濃い温泉地”だと感じてきた。

今回、私が向かったのは鳴子温泉の中でも最古級の湯とされる姥の湯。義経と郷御前、亀若君の伝説が残り、鳴子という地名の由来にも深く関わる場所だ。温泉神社の境内にある帝子碑の由来記を読むと、文治元年、義経が奥州へ落ち延びた際、郷御前が産気づき、亀若君を出産したという。その産湯に使われたのが、この姥の湯の源泉だと伝わる。

私は以前から、温泉と伝説が重なる場所に惹かれてきた。温泉は地熱と水が生む自然現象だが、そこに人々が物語を重ねることで“文化”になる。鳴子温泉はまさにその典型で、湯治文化、木地師文化、義経伝説が複雑に絡み合っている。

姥の湯は、湯治宿として400年以上の歴史を持ち、今も4種類の源泉を自家源泉で湧かし続けている。湯の古さだけでなく、伝説と地名の由来が重なる“文化の源泉”でもある。

その物語を確かめたくて、私は鳴子温泉へ向かった。

参考

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姥の湯とは?

姥の湯は、鳴子温泉郷の中でも特に古い歴史を持つ湯治宿だ。創業は400年以上前とされ、鳴子最古の湯「滝の湯」と並び、古くから湯治客に親しまれてきた。宿の敷地内には「姥の湯石」と呼ばれる岩が祀られており、そこに掲げられた由来記には、この温泉が“岩盤の下から湧き続けてきた古湯”であることが記されている。

興味深いのは、洪水で湧出口が失われても、同じ岩盤の下から再び湧き出たという伝承だ。温泉は地形と地熱の偶然の産物だが、姥の湯のように“場所が変わらない湯”は珍しい。だからこそ、源泉の上に祠を祀り、自然の恵みに感謝する文化が生まれたのだろう。

姥の湯の特徴は、4種類の源泉をすべて自家源泉で持つこと。硫黄泉・芒硝泉・単純泉など泉質が異なる湯が一つの宿に揃うのは、全国的に見ても稀だ。鳴子温泉郷は400以上の源泉がある“源泉の宝庫”だが、その中でも姥の湯は特に多様な泉質を楽しめる宿として知られている。

しかし近年、姥の湯は大きな転換期を迎えたようだ。ネットやSNSの情報を見ると長年の湯治宿としての歴史を未来につなぐため、事業承継により新しい運営会社へと引き継がれたようだ。2025年までは日帰り貸切湯として営業し、2026年には新しい旅館として再スタートする予定で、公式Instagramを見ると現在は改装のため休業中。15年以上前、友人とはじめて姥の湯旅館を訪れてから定期的に通っているファンの1人として、新しく生まれ変わる姥の湯がとても楽しみだ。

姥の湯旅館

所在地: 〒989-6824 宮城県大崎市鳴子温泉河原湯65
電話番号: 0229-87-8933

姥の湯の歴史「源義経と郷御前、亀若君の伝説

宮城県大崎市鳴子温泉の姥の湯の啼子の碑
宮城県大崎市鳴子温泉の姥の湯の啼子の碑

鳴子温泉の魅力を語るうえで欠かせないのが、義経伝説だ。温泉神社の境内にある啼子碑には、文治元年(1185年)、源義経が京都から奥州へ落ち延びた際の物語が刻まれている。

義経の側室(あるいは正室)である郷御前((さとごぜん)は身重で、亀割峠(現在の山形県最上町付近)で男子・亀若君(かめわかぎみ)を出産したと伝わる。しかし、生まれた子は泣かなかった。家臣たちは不安に駆られ、義経一行は“この地に温泉がある”という情報を頼りに、川原に湧く温泉へ向かった。

その温泉こそが、現在の姥の湯の源泉だと記録されていた。亀若君を温泉に浸すと、初めて産声をあげた。この出来事から、この地は「啼子(なきこ)の湯」と呼ばれるようになり、後に「鳴子(なるこ)」へと転じたという。事実、姥の湯は江合川流域にある温泉であり、江合川の岸には源泉が湧いているスポットがある。

さらに啼子碑の由来記にはこう記されている。

「子供は温泉に浸かった。この地を呼んで啼子の温泉という。」

“啼子”とは亀若君のことを指す。つまり、鳴子温泉は義経の子の産湯の地であり、地名そのものが“赤子の泣き声”に由来しているのだ。

姥の湯旅館に残る由来記にも同様の伝承が記されており、鳴子温泉の地名と姥の湯の源泉が深く結びついていることが分かる。

温泉は地熱と水が生む自然現象だが、そこに人々が物語を重ねることで“文化”になる。 鳴子温泉は、まさにその象徴のような場所だ。

姥の湯の源泉と“姥の湯石”の由来

姥の湯の敷地に足を踏み入れると、まず目に入るのが「姥の湯石」と呼ばれる大きな岩だ。かつてこの岩の下から温泉が湧き出し、洪水で湧出口が埋まっても、再び同じ岩盤の下から湯が湧いた。そんな伝承が残っている。温泉は地熱と水が偶然出会って生まれるものだが、“場所が変わらない湯”というのは非常に珍しい。姥の湯が「古湯」と呼ばれる理由は、この岩盤と湧出の歴史にあるのだろう。

この源泉の上には、私がはじめて姥の湯を訪れた時からすでに小さな祠が祀られていた。湯治宿としての歴史が長い姥の湯では、湯そのものを“自然からの恵み”として大切に扱ってきた。湯治客が祠に手を合わせる姿は、温泉が単なる入浴施設ではなく、生活と祈りの場であったことを静かに物語っている。

4種類の源泉を楽しむ

姥の湯の魅力は、なんといっても4種類の源泉をすべて自家源泉で持つことだ。鳴子温泉郷は400以上の源泉がある“温泉の宝庫”だが、1つの宿でこれほど多様な泉質を楽しめる場所はほとんどないだろう。

中でも人気なのが、白濁した硫黄泉「こけしの湯」。硫黄の香りがふわりと漂い、湯に身を沈めると肌がすべすべと滑らかになる。分析書を見ると、含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉(硫化水素型)で、硫黄泉でありながら中性という珍しい泉質だ。万座温泉のような強い酸性の硫黄泉とは異なり、刺激が少なく“美肌の湯”としての側面も持つ。

芒硝泉は、湯治客に人気の落ち着いた湯。長く浸かると体の芯から温まり、湯治文化が育まれた理由がよく分かる。単純泉は柔らかく、湯疲れしにくい。湯治宿として長く親しまれてきた姥の湯らしい、優しい泉質だ。

実際に入ってみた

姥の湯に入ったとき、まず感じたのは“静けさ”だった。湯治宿らしい落ち着いた空気が漂い、湯船に身を沈めると、外の世界がすっと遠ざかる。鳴子温泉の中でも、姥の湯は特に“時間がゆっくり流れる湯”だと感じた。

最初に入ったのは、白濁した硫黄泉「こけしの湯」。湯面から立ちのぼる硫黄の香りが心地よく、湯に浸かると肌がすべすべと滑らかになる。刺激が少なく、長く浸かっていられる硫黄泉だ。湯の温度も適温で、湯治客が長く滞在する理由がよく分かる。

次に芒硝泉へ。こちらは透明で、湯に浸かると体の芯からじんわり温まる。湯治文化が育まれた理由がよく分かる“落ち着く湯”だ。湯船の縁に座り、湯気の向こうに見える古い木の壁を眺めていると、まるで時間が止まったような感覚になる。

単純泉は柔らかく、湯疲れしにくい。湯治宿としての姥の湯の優しさがそのまま湯に表れているようだった。

姥の湯の周辺で立ち寄りたいスポット

姥の湯を訪れたら、周辺のスポットもぜひ巡りたい。鳴子温泉はコンパクトな温泉街だが、文化・自然・食がぎゅっと詰まっている。

まず立ち寄りたいのが、鳴子最古の湯とされる滝の湯。姥の湯と並び、鳴子温泉の原点ともいえる存在だ。湯治文化の香りが残る素朴な湯で、地元の人々にも愛されている。

次におすすめなのが、火口湖の潟沼(かたぬま)。エメラルドグリーンの湖面が印象的で、晴れた日は光を反射して宝石のように輝く。姥の湯から車で10分ほどだが、鳴子の自然の奥行きを感じられる絶景スポットだ。

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姥の湯は現在、2026年の新旅館オープンに向けて改装休業中だが、周辺のスポットは変わらず鳴子の魅力を伝えてくれる。

日帰り入浴の料金・営業時間・混雑しない時間帯を解説

姥の湯は長い歴史を持つ湯治宿だが、近年の事業承継により運営体制が変わり、2025年までは日帰り貸切湯として営業していた。湯治宿としての宿泊営業は一度幕を下ろし、2026年の新旅館オープンに向けて現在は改装休業中だが、ここでは“旧姥の湯”としての利用方法を記録として残しておきたい。

日帰り入浴は、貸切湯としての利用が中心だった。料金は湯船の種類や利用時間によって変わるが、高い湯でも約3000円程度。いずれも「家族で静かに湯を楽しむ」「湯治の雰囲気を味わいたい」という人に人気だった。鳴子温泉は共同浴場も多いが、姥の湯の貸切湯は“湯治宿の静けさを独り占めできる”という特別感があった。

営業時間は季節によって変動したが、午前中は比較的空いており、湯の鮮度も良い。鳴子温泉は源泉が多いため、湯の鮮度が時間帯によって変わることがある。姥の湯の硫黄泉「こけしの湯」は特に湯の状態が繊細で、朝の時間帯は香りも柔らかく、湯の肌触りも心地よかった。

混雑を避けたいなら、平日の午前中が最もおすすめだった。湯治宿としての利用者が多い時期でも、貸切湯は比較的ゆったり使えることが多かった。

現在は改装休業中のため、日帰り入浴は行われていないが、2026年の新旅館オープン後、どのような形で湯が提供されるのか楽しみだ。 姥の湯の湯は、ただの温泉ではなく“鳴子の原点”を感じる湯だからだ。

アクセス解説

姥の湯へのアクセスは、鳴子温泉の中でも比較的わかりやすい。JR陸羽東線「鳴子温泉駅」から徒歩約10〜15分。駅前の温泉街を抜け、鳴子峡方面へ向かうと、湯けむりの向こうに姥の湯の建物が見えてくる。坂道はあるが、散策としてちょうど良い距離だ。

徒歩ルートの魅力は、鳴子温泉の“生活の風景”を感じられることだ。共同浴場「滝の湯」、こけし工房、温泉まんじゅうの店、足湯──温泉街らしい風景が続き、歩くだけで旅の気分が高まる。

車で訪れる場合は、東北自動車道「古川IC」から国道47号線を鳴子方面へ約40分。川沿いの景色が美しく、四季ごとに表情が変わる。特に紅葉の季節は、鳴子峡周辺が混雑しやすいため、午前中の早い時間帯に訪れるのがおすすめだ。

姥の湯には専用駐車場があり、車での訪問も安心。湯治宿としての時代から、長期滞在者が多かったため、駐車場は広めに確保されている。

現在は改装休業中だが、2026年の新旅館オープン後もアクセスの良さは変わらないだろう。

駐車場情報

姥の湯には、湯治宿としての歴史を反映するように、広めの駐車場が整備されている。長期滞在の湯治客が多かったため、車で訪れる人が多く、駐車スペースはゆとりを持って確保されていた。現在は改装休業中だが、2026年の新旅館オープン後も駐車場は引き続き利用できる見込みだ。

鳴子温泉街はコンパクトだが、道が細い場所も多く、観光シーズンは混雑しやすい。特に紅葉の季節は鳴子峡周辺が渋滞しやすく、駐車場も満車になりやすい。姥の湯を訪れる際は、午前中の早い時間帯に到着するのが理想的だ。

また、鳴子温泉街は坂道が多いため、冬季は路面凍結に注意が必要だ。スタッドレスタイヤは必須で、積雪時は早朝の移動を避けた方が良い。姥の湯は温泉街の中心から少し離れた場所にあるため、車でのアクセスは比較的スムーズだが、冬の運転には十分注意したい。

徒歩で訪れる場合は、鳴子温泉駅からの道のりに足湯や土産物店が点在しており、散策としても楽しい。車を停めて温泉街を歩くのもおすすめだ。

姥の湯は現在改装中だが、駐車場の利便性は変わらず、再オープン後も訪れやすい温泉になるだろう。

まとめ

姥の湯を訪れて感じたのは、ここが単なる温泉ではなく“鳴子温泉の原点”だということだった。義経と郷御前、亀若君の伝説が残り、鳴子という地名の由来にも深く関わる場所。温泉神社の帝子碑に刻まれた物語を読むと、温泉が歴史と人々の記憶を静かに抱えてきたことが分かる。

姥の湯の源泉は、岩盤の下から湧き続けてきた古湯で、洪水で湧出口が埋まっても同じ場所から再び湧き出たという伝承が残る。源泉の上に祠が祀られているのは、湯を“自然の恵み”として大切にしてきた湯治文化の象徴だ。

4種類の源泉を自家源泉で持つという希少性も、姥の湯ならではの魅力だ。硫黄泉「こけしの湯」は白濁しながらも中性で、肌に優しい。芒硝泉は体の芯から温まり、単純泉は柔らかく、湯治宿としての歴史をそのまま湯が語っているようだった。

湯治宿としての姥の湯は、素朴で静かで、時間がゆっくり流れる場所だった。自炊場で食事を作る湯治客、湯船で自然と始まる温泉談義──現代の温泉旅館では味わえない“湯治の共同体”の空気があった。

しかし今、姥の湯は大きな転換期を迎えている。事業承継により新しい運営会社へと引き継がれ、2025年までは日帰り貸切湯として営業。そして2026年には、新しい旅館として再スタートするため、現在は改装休業中だ。

古い湯が未来へ受け継がれようとしている── その姿は、鳴子温泉という土地が持つ“文化の強さ”そのものだと感じた。

姥の湯は、歴史・伝説・泉質が重なり合う特別な温泉。 再び湯が開かれる日を、心から楽しみにしている。

投稿者プロ フィール

東夷庵
東夷庵
地域伝統文化ディレクター
宮城県出身。京都にて老舗和菓子屋に勤める傍ら、茶道・華道の家元や伝統工芸の職人に師事。
地域観光や伝統文化のPR業務に従事。

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